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第9話 楽しい楽しいお買い物♪

お買い物、1軒目。

 さぁ、今日は買い物の日だ!


 特に変な夢も見ず、いつもの時間くらいに起きた僕は、早速隣のベッドのミルカを起こそうとして、その向こうのベッドにレナードを発見。

 街の宿のベッドで朝に見る事が殆ど無かったから、ある意味新鮮かも。

 回り込んで見てみると、まだ寝てる。

 目の下に凄い隈が出来てて、親父さんといつまで話してたんだろうって思うけど、今日はレナードが居ないと話にならない。

 何せ、財布はレナードが持ってるんだから―――。


 ここまで思い至って、僕はある事に漸く気がついた。


 そうだ。なんで今まで何とも思わなかったんだろう?

 ここの宿代や食事代も、昨日の屋台通りの代金も……全部レナードが払ってる。

 そりゃそうだ。まだ子供の僕達にお金を稼ぐ術なんてまるっきり無いんだから。

 当然の様に、今日の買い物だってレナードが払うんだろう。


 早く稼げる様になって、少しずつでも返していかないと……。


「なんだかんだで優しいんだよな……」


 思わず呟いてしまって、ぶんぶんと振り払う様に頭を振る。


「―――レナード、レナード起きろよ!」


 ちょっと強めにゆっさゆっさ揺さぶると、一声唸って細く目を開けた。


「あー、ディート……おはよ;」

「……酷い顔してるね; 大丈夫?」

「―――だ、大丈夫……じゃないかも;」

 

 そう言いつつも、大きな欠伸と伸びをして起き上がり、


「顔洗ってくるー。ミルカも起こしといて……」


 と言い残し、ちょっとふらつきながら部屋を出て行った。この宿にはご丁寧にも、各階に共用の洗面所みたいな所が備えてある。そこへ向かったんだろう。


「ミルカ、ほら、起きろよ! 今日は楽しい楽しい買い物の日だぞ!」


 流石にさっきよりは優しく揺さぶる。”買い物の日”ってのが聞こえた途端、ミルカがムクリと起き上がった。


「そっか、今日はお買い物だ!」


 ふと横を見て乱れたベッドに気付き、不思議そうに聞いた。


「あれ、レナ居たの?」

「今顔洗いに行ってるよ」

「え、そ、そうなの?! た、大変!!」


 ミルカは大慌てで服を着替え始める。その内コンコンとノックがして、外からレナードの声が聞こえる。


「おーい、入って良いかい?」

「レナ?! も、もうちょっと…………うん、良いよ!」


 着替え終え、入室許可を出す。


「おはよう、ミルカ。顔洗っておいで」

「うん、行ってくるー」


 入れ替わりに部屋を出て行くミルカ。


「部屋入るのに、なんでわざわざ聞くんだよ?」

「ミルカもお年頃なんだよ。そろそろ部屋分けるべきかなぁ?」

「??? おとしごろ??? ―――意味分かんないよ」

「ディートはもうちょっとデリカシー持たないと……ミルカも女の子だって事だよ。

 ミルカが頼りに出来る様な女性の仲間が出来ると良いんだけどねぇ」


 マジで分からない僕に、レナードはため息を付く。


「ミルカが戻ったら、朝ご飯食べて出掛けよう。

 ん~、どこから行こうか」


 三人で下に下りると、ケイトさんが声を掛けてくれる。


「おはようございます! 新メニュー、とっても好評ですよ!」

「おはよー、ケイトさん。って、もう出してんの?」

「好評なのも当然! レナの作ってくれるゴハンはいつだって美味しいもん♪」


 と話していると、厨房から若い男性が出て来た。


「あ、あなたがレナードさん? 俺はマイロと言います。今度は是非俺も話に交ぜてくださいね! 絶対ですよ!」

「息子さん? 親子揃って料理に対する熱が凄いね~;」


 目をキラキラさせたマイロさんの圧に、レナードはタジタジ。


「いや、スミマセン。でも俺、料理技能Sの人に会ったの初めてなんですよ!

 今まで親父のAが最高で……それにあんな美味しいソースまで教えて貰っちゃって。

 どうやって恩を返せば良いのか……」

「大袈裟だって。また美味いもの作って食べさせてくれれば良いよ~。

 ―――じゃあ早速だけど、朝飯頼んで良い?」

「! ええ、喜んで!!」


 マイロさん入魂? の朝食を堪能して、出掛ける事にする。その前に、レナードが宿の受付に居る女将さんに用があるからと、そちらへ回る。

 元冒険者の女将さんはスラリとした長身の美人で、まるで熊みたいな親父さんとは正反対のイメージだ。


「あら、お兄さん。昨日はウチの旦那がごめんなさいね?

 あの人ったら、話聞いてモリモリやる気出しちゃったのよ」

「あはは、喜んでもらえたなら良かったですよ。

 ところで女将さん、オススメの武器屋に防具屋、魔法屋とかありませんか?」

「お買い物?」

「ええ、主にこの子達の装備を調えようと思いまして。明日から新人講習なんです」


 女将さんは微笑んで激励してくれる。


「まぁ、そうなのね! 頑張ってね、二人とも。

 新人講習で教えてくれる事は基本中の基本だけど、知っているといないとでは大きな差になってしまう事があるから。―――時には生死を分ける事だってある。


 って、いけない、オススメのお店の話だったわね! そうねぇ……」




    ***  ***




 女将さんオススメのお店の内、まずは近い所から……で、防具屋へやって来た。盾の描かれた看板が掛かっていて、店名は『命のよすが』。……変な名前;


「こんちは~」

「おう、いらっしゃい! 今日は……もしかして、このチビさん達の防具かい?」


 出迎えてくれたのは、40代くらいの無精ひげで陽気そうなおじさん。


「も~、チビじゃないもん!」

「おっと、こりゃ失礼した。新人さんか?」

「そうなんだ。明日から新人講習でね。装備を調えようと思って。

 飛龍の翼亭の女将さんにお勧めされたんだ」

「そうか、レイチェルさんに……そりぁあサービスしねぇとな!

 ―――で、お探しなのはどんな物だい?」


「ディートには戦士ファイター用の防具を。

 といっても、まだ成長期だから大人用じゃ合わないだろうなって。

 で、ミルカには……あ;」


 何かに気付いた様にレナードが言葉を切った。


「レナ、どうしたの?」

「しまった。ミルカは魔術師メイジになったんだから、軽装革鎧ライトレザーアーマーは装備制限で身に付けられないんだった」

「え、でも今着てるよ?」

「いや、ペナルティが課されるんだよ。身動きが取りにくくなったりとかもあるけど、魔術師メイジとしては最大の問題があってな?」

「最大の問題? って何?」

「布の服とかローブ以外の防具を着てると、魔法が使えない」

「えー、なんでー?!」

「詳しく知らないけど、魔素の循環がどうとかで? だから、その軽装革鎧ライトレザーアーマーはもう着られないと思った方が良い。どの道、すぐ成長して合わなくなるし」

「むー、気に入ってたのに……残念」

「―――と言う訳で、ミルカには魔術師メイジ用の防具を見繕って欲しいんだ」

「ふむふむ、よっしゃ、任せとけ!」


 そんなこんなで、まずは僕の分。


「採取系の依頼クエストメインなら今みたいな革鎧レザーアーマーでも良いだろうが、討伐系に行くなら下に鎖帷子とかも考えた方が良いんじゃねぇかなぁ?」

「うーん、重くなんない?  まだまだ体出来てない年齢だしなぁ……。

 ディート、取り敢えず一回試着させて貰うか?」

「良いの?」

「構わねぇぜ。そうだな、コレとコレ、両方持って行くと良い。どっちがしっくりくるか聞かせてくれ」


 小さめと大きめ、2セット渡されて、試着室だと言う所へ案内される。……カーテンで仕切っただけの場所で、壁には大きな鏡が掛けてある。まずは、小さめだと言われた方。

 うーん、ちょっと……キツいかな? じゃあ、次……は、うん、ゆったりしてる。

 レナードは重さを気にしてたけど、そこまで重く感じないけどなぁ?

 そのまま、外に出て聞いてみる。


「どうかな? 着た感じは大きい方が合ってるかな」

「わ~、兄さん似合ってる!」

「違和感とか、重さは感じない?」

「今のところは無いかなぁ」

「まぁ、その辺は実際動いてみねぇと分かんねぇかもなぁ。

 新人講習で動いてみて、違和感ありゃあ交換なり調整なりはさせて貰うぜ?」


 店主は『なんたってレイチェルさんの紹介だしな?』とガハハと笑う。


「有難いサービスだね。どうする? ディート」

「じゃあ、これでいいかな」

「今度はわたしの番だね♪」


 と鼻息荒く? 物色し始めるミルカだったんだけど……。


「あー、その、なんだ。

 悪いな、嬢ちゃん……ウチはあんまり女の子のお客さんってのが来なくてなぁ;」


 おじさんの言うとおり、布の服とかローブは全部大人サイズばかり。

 しかも、実用一辺倒ぽい地味な色味の物しかない。

 派手な色は敵の標的になりかねないから、当然と言えば当然だけど……ミルカはすっかりしょげてしまってる。

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