魔法使いが伝えたいことは
眼鏡をふいてかけなおしたジョーは息をはくようにうなずく。
「 ―― 神話では、そうやって戦争をひきおこすため、いちどだけつかわれたことになっている。それによって神の怒りをかった魔法使いは《神の遣い人》の宮殿を追い払われて、トパム山に住むことになり、人との交流を絶たれたんだ」
ところが、元来楽しいことが好きな性質のせいで、ずっと山でおとなしくしていることができなかった。
なんだそりゃ、とザックは口をまげた。
「『神様』って、そういうのちゃんと監視してねえのかよ?」
「もちろんなさっている。―― だから、そこで『白いカラス』が活躍する」
直接の交流ではなく、伝達の手段として。
「 だから、ルイのところへずっと『白いカラス』が現れるというのは、『魔法使い』からなにか伝えたいことがあるのかもしれない」
「それって、ルイが『光』がみえる、とかいうことと関係あんのか?」
椅子にだるそうにすわっていたケンが背をのばし、顔をジョーにふりむけた。
「・・・もしかしたら、あるのかもしれないが、わからない。 なにしろ、きみたち全員が今現在『魔法使い』にためされている最中のようだし、きみたち全員、レイの『光』をあたえられた特異な存在だ。 わたしにはわからない」
首をふるジョーにザックが、たよりにならねえな、と指をつきつける。
あいてはわらい、「すまんがおれは、『白いカラス』のはなしをしてこいとウィルにいわれてきただけだからな」と肩をすくめてみせた。




