魔女ではなく魔法使い
ジャンのわかりやすく簡潔な説明の間にジョーは二度ほど神に祈った。ルイの母親がカラスに殺されたという話と、レイの事件の話に。
「あいつは恐れ多くも『神』の名をだした ―― 」
元聖父とはおもえない汚い言葉でクレイをさんざんののしり、我に返ると、要点をもどした。
「 ―― その、レイの『光』がみえるという男のもとに、『白いカラス』が来たということか?」
しかも、前にすんでいた家にもまだ訪れると?
「おれたちもみたよ。『白いカラス』」
でも、みえない人もいるみたいだ、とザックはつけたす。
ジョーは、ふうん、と太い腕を組んだ。
「 ・・・おれの知ってるはなしをしよう。 『白いカラス』っていうのはこの国じゃそれほど知られていないが、むこうの大陸じゃあ,むかしから『魔法使いの遣い』として知られてる」
「それって、魔女じゃなくて、魔法使いなわけ?」
別なんだ?とザックが念をおす。
「『魔女』はここじゃあみんな女だ。しかも『悪鬼』と一緒の場所に暮らしてる。 ところが、むこうの大陸の『魔法使い』ってのは男も女もいて、トパム山に住んでいる」
「トパム山って、あの高すぎて人がのぼれないっていう山?」 むかし学校で習ったようなきがする、という若者に 「人は住めないが、かわりのものがすんでいる」と、年寄のようにしたり顔でうなずく。
「こっちにいる魔女とどこがちがうんだ?」
『魔女』にいい思い出のない副班長が、籐椅子の中でみじろぎする。




