やっぱり・・・
払いのけるように動かした手に、何かがぶつかり目がさめた。
「ご、ごめん。うなされてたから・・」
ぼんやりした明かりの中に、見知った影がある。
「 ・・・いや、こっちこそ、ごめん・・・」
まだはっきりとしない頭をほぐすように額をもみ、間近で見下ろす顔に謝った。
相手は手にタオルを持ち、眉をよせて「だいじょうぶ?」ときく。
「・・うん。なんとも、」
細い指がいきなり頬骨をおさえるようにあてられ、だそうとした言葉がとぎれる。
「 ルイ。 『なんともない』、とかいわないでね? 目の下はまっくろで顔色ひどいし、やせたでしょ? ―― 眠れてないんだね?」
顔にあてられた指をそっとはずすようにとりあげると、そのゆびが力強くこちらの手をにぎった。
レイは微笑んではいるが、心配そうな目をしてるのがわかる。
その顔がまぶしくて、目をとじる。
「・・こうやって・・レイに看病されるなんて・・《守護人》に見守られて最後のときがきたみたいだなあ・・」
やわらかいタオルが額にあてられ、変なこといわないでよね、と鼻をつままれる。
「ルイが倒れたってきいて、ぼくほんと、心臓とまりそうだったんだからさ。みんな働きすぎなんだよ。必要とされてるからしかたないけど・・・」
それでも警備官は休みが足りないと文句をいう男は、同じ警備官であり、自分の属す班の班長である男の婚約者だ。
その彼が自分の家にいるということは、ケンにでもだまされて呼ばれたのだろう。
「迷惑かけてわるかった」おきあがろうとすると、「まだ立てねえだろ」と足元からにやけた声がする。
「ケン・・・やっぱりおまえか。どうりで眠くって仕方なかったはずだよ。なんの薬だ?」
そうだ。
実際は、レイが心配するような『倒れ』かたをしたわけではない。
サリーナの作戦に従い茂みにひそんでいる間、ルイはただごとではない眠気におそわれていた。
それをごまかすためにザックに声をかけたのだ。