ニコルは帰る
すると、何かに耐えかねたように、ジャンが片手をあげた。
「 ―― みんな、わるかった」
「まてよジャン、今度はお前か?」
ニコルがいらだったようにサブチーフに拳をふる。
よばれた男は自分の濃い黄色の髪をかきまわし、みんなに目をむける。
しばらく黙ってから、じつは、ときりだした。
「・・・おれ、―― 知ってたんだ。クレイが出てくるって」
なに!?おい!なんで?うっそ!
一斉に非難と驚きが混じった声があがる。
「ごめん、ちょっとまえにノアから聞かされてたんだけど、みんなに言うまえにバートに確認しようと思って。 そしたらうまく時間があわなくってまだ聞けてなくて・・・」
こんな早くに外にでてくるとは思っていなかったし、とつけたすのに、ウィルが「いいわけだね」と冷たく言った。
「おい、ウィル、おまえちょっと頭ひやしたほうがいいぞ」
「なんだい?へえ、ニコルはえらく冷静だね。 ルイが肝心なことだまってたのを、『迷った末』だって?自分に都合悪いから黙ってただけじゃないか」
「黙ってるのだってつらかったはずだろ。みんなの反応が怖かったんだ」
「そんな理由で黙ってるなんて卑怯だよ。ケンだって、」
「ケンのけがはルイのせいじゃないだろう? それこそあのへんな《白いカラス》のせいで、ルイがなにかしたわけじゃ」
「ほんとうに? ―― ルイはレイの光がみえるんだろう?さっきジャンが言ったじゃないか。それなら、あのマデリンといっしょだって。 ほら、なにかできるかもしれなっ 」
バンっ
鈍い音でぶっとんだウィルが、ザックが整えたばかりの机の上に倒れた。
すぐに起き上がった男の右腕をとびだしたザックがすくいあげて腕をからませ、とびついたジャンが首をつかんで机に再度倒してどなった。
「ニコル!家にかえれ!」
「言われなくてもそうする。 ―― ついでに、しばらく休暇とるさ」
片手をあげた男は疲れたようにドアをでていった。




