紳士たちが預かろう
男はかわりにかがみこみ、ケンの頭をつかみ上をむかせる。
血走った目でショーンをにらむケンは口をあけない。
「 そうか。『反省』して自分で口の中をかみ切ったか? 自分をとりもどすには手っ取り早い方法だし、むかしにくらべれば、暴れ方もかわいいもんだな」
でもなあ、とドアをあけた男はどうやら外で待機していたらしい班員に合図した。
「・・・まあ、しばらくうちで預かろうか。ちょうど仕事あがりだったからみんなそろってるし、うちは、A班とちがって落ち着いた《紳士》の集まりだからな」
その班長の言葉にわらった男たちのうち二人が部屋にはいり、ケンの腕と足をそれぞれつかみもちあげた。
「・・・おれ、A班やめる」
おかしな格好でつるさげられた男が低く言い切った。
口から血が糸をひくようにたれてカーペットに染みができる。
「う、うっそ!ケン、なんでだよ!」
「もうルイとやってく気はねえから」
ザックの叫びに答えるそれは機嫌の悪いこどものものだ。
苦笑したJ班の男たちがそれならうちの班にはいれ、と部屋の中の男たちにわらってみせ、不機嫌な《こども》をぶらさげてでていった。
最後にでてゆくショーンがふりかえる。
「 ―― よくきけ。 ケンのけがはルイがしかけたテロなんじゃないかってアッシャーにふきこむ馬鹿がいるらしい。 おれたちも、K,M班の連中もそれについて意見をきかれた」
「はあ?だれがそんな馬鹿なこと」
まさかうちの社内じゃないよな、と頭をかくジャンの肩をショーンはたのしげにたたいた。
「おれたちはわかってるが、どこにでもそういう馬鹿はいるもんだ。 いいか、そんなやつの思惑通りになんかなるなよ」
残された男たちはおたがい顔をみあわせた。
「ばからしい」言ってニコルが倒れた椅子をなおし、床にちらばった紙をひろいはじめる。




