みりゃわかる
「さて、おれたちもひきあげるか」
装備を手にして、少し離れた場所にある会社のバンにむかう。
グアアァオウ
「ひい!」
いきなり頭上から苦しげで枯れた鳴き声がして、ザックは身をすくめた。
カラスだろ、とケンが枝を広げる木をみあげる。
「ええ?カラスってこんな夜でも鳴くのかよ」
びっくりさせるなよ、とザックが文句をいいながら足早に車にむかう。
バンの後ろをあけて荷物をしまいこみ、来た時と同じようにルイが運転席にのろうとするのを、ケンがとめた。
「おれが運転する」
「それがいいよ、ルイ。 おれも、実は、ずっと顔色よくないって思ってたし」
新人にまでそう言われてしまい、笑ったようにあきらめた男は、バンの後部にある向かい合わせの長椅子にこしかけることにした。
「ザックにもわかるくらいかな?」
向かい合ってすわる新人とは、一緒に仕事し始めてまだ一年もたっていない。
「あのさあ、おれだってみりゃわかるっての。 ・・・ただ、―― ルイはあんまり自分から自分の状況報告しないだろ?だから、あんま『大丈夫?』っていわれたくねえのかなって」
なぜか不満そうにザックが口をとがらせる。
「ザックなんか『腹が痛い』だの『昨日仕事で疲れた』だの、きいてもねえのに状況報告するもんなあ」
よっぽどみんなに『大丈夫?』って言われたいのだろうとケンが仕切り版の向こうの運転席でわらう。
「うるせえなあ。そういうのは口にしたほうがいいんだよ」
「おまえの状況なんかきいたっておもしろくねえ」
「ケンだってよく『つまんねえ、かえりてえ』っていうだろ?」
「ありゃ、つまらねえ仕事の感想を言ってんだ」
「周りにきこえるよう言ってんだから、おれとおなじだろ」
「それならバートのほうがひでえじゃねえか。あいつ『家に帰りてえ』だぜ?」
「そりゃそうだけど、・・・」
そこでザックは口をとじ、バンの中に置きっぱなしになっている毛布をひろいあげて、むかいの長椅子にたおれこむようにして眠る男にかけてやった。
「・・・なあ、このところおれたちって、そんなに『いそがしく』ないよなあ?」
仕切り版に顔をつっこみ、運転中の男に確認する。
「ルイのやつ、なんでさっき、サリーナにあんないいわけしたんだろ」
「そりゃさっきおまえが言っただろ?」
ルイは、『大丈夫?』っていわれたくねえのかなって
「おれたち・・・実はそんなに、ルイに気を許されてねえのかな」
「さあな。きいてみればいいんじゃねえか?」
おれも気になる、というケンが、遠回りして帰るぞ、とアクセルをふみこんだ。




