こ こ に
だからてっきり、と白い髪をおさえるような仕草をした。
「 てっきり・・・『白いカラス』はルイの父親のことを暗に示してると思ってたわ」
その男が海をこえ、ついに彼女たちをみつけて迫ってきた。
きっとその男が家にきて、窓の下から彼女を呼んだのだ。
「心臓が悪い彼女は窓をのぞいて彼をみつけ、ショックで倒れた。こどもがみつからないようにルイをベッドの下に押し込んだ。 ―― そう考えたの。・・・だってそれしか考えられなかったから。なのに、―― 」
「『白いカラス』が夢にでましたか? それとも街角に?」
ジャンの言葉にわらった女の顔は不敵だった。
「 こ こ に 、来たわ。 この屋敷はアヌエル一家のものよ。《ここ》に、セリーヌもルイも暮らしてた。 彼女の死後、遺言でここにわたしとルイが一緒にくらすことになったの。 もとからいた老夫婦はそのまま仕事を続けてもらうことにしたわ。ルイが十歳になったころに二人とも引退したけど、亡くなるまで屋敷の中に立てた小さな家で暮らしてた。こどものいない人たちだったからみんなでみとったわ。 ―― 亡くなる直前の庭番がわたしに、ルイを『カラス』に渡さないでくれって言い残した。 ―― そうして、白いカラスが、《ここ》に、来るようになった」
はじめは遠くの木におおきな白い鳥がとまっているのが気になった。
「サギでも白鳥でもないわ。 大きいけれど『カラス』にしかみえなかった」
それが、庭の上をとびはじめた。
「ここの庭に、鳥がとまれるような木が植わっていないってことにそのときようやく気が付いた。『カラス』はなぜか、庭の芝生にはおりられないみたいだったわ」




