ヒマだったから
いちばん最後にケンと出てきた警察官が乱暴にマスクをはずしながらルイの前まできて、「言ったよな?」と指をつきつけた。
「 ―― お前らのその性能のいいマスクをうちにもよこせって」
つめよる女の髪は一部を残し刈り込まれ、全体的に赤色に染められている。
両耳にはおびただしい数のピアスがひかり、それがこの暗い中でも頭をうごかすたびに反射する。
「 ああ、ジャンがその件は、あとはそっちがいつ受け取るか、だって」
「はあ?じゃあ、またこっちのバカが、意地はってもらってないってのかい?」
手にした旧式のマスクをぶんぶんと振ってむこうにいる誰かの名をよび、それを投げ渡した。
「 ―― 帰ったらそのバカ見つけてぶんなぐる。 それと、―― ルイ、あんたたちが役に立つってのはわかってるが、作戦実行中に私語が多すぎる」
ずい、と下からルイに顔をよせる。
ほんらいならキスをねだるような距離だな、とザックが考えたとき、赤い頭の女がこっちをみた。
「 『新人』、あんたのことを言ってんだ。 ルイとケンは作戦中のトーンに落としてるのに、おまえの声だけあたりに響く。 あんな声、迷子になったときにつかいな」
「はあ?」
ふみだそうとしたザックの肩をケンがひく。
「ケンもにやけてないでちゃんと面倒みろよ。子守できないならつれてくるな」
「『子守』って、おれはこどもじゃねえ」
言い返したザックの前にすいと出たルイがうなだれる。
「・・・悪かったよ、サリーナ。ザックじゃない。おれがザックにわざと話しかけたんだ。・・・あまりにも・・・・・暇だったもんで」
「ひま!?」
ルイの言葉にショックを受けたように女はまたしても下からつめよった。