『若くて正直』
ザックは二人のやりとりを眉をよせてながめ、自分の番がくると握手はしたがキスはしなかった。
それでも満足そうにあいてはうなずいた。
「若くて、正直ね。 部屋に入った時からずっと眉間にしわをよせてるもの」
あわててそこへ指をあてるザックを、この部屋へと案内した女がわらい、「あなたがA班にあたらしく入った子ね。 飲み物はお茶よりジュースのほうがいいかしら?」ときく。
「 そりゃお茶はあんま好きじゃねえけど、こどもにきくみたいにきかないでくれよ」
と返したザックの頭をジャンがつかんでゆすり、まだちょっと口のききかたがわからない年頃でして、と謝る。
ザックが言い返す前に女二人が声をたてて笑い、そこでようやくザックは気づく。
「・・・二人して笑い方そっくり。あれ?ってことは、もしかして・・」
若いほうのこの女は・・・。
「ギャラガー夫人、ほんとすみません。 うちの新人はまだ、《警察官》のほうの顔とか名前がおぼえきれてなくて」
「いいのよ。当然だわ。警察官でもわたしの顔を知ってる人なんて限られてるし」
「あ、やっぱ長官の奥さんなんだ。しらなくてごめん」
ザックが謝るのにまた笑いがおこり、上司はしぶい顔をした。
しばらくしてみんなが片手に冷えた炭酸ジュースのビンを持ち、男たちも長椅子と同じ臙脂色の布が張られた椅子にこしかけると、ギャラガー夫人が、いかに警備官たちに警察官が助けられているかを母親に(ややおおげさに)説明した。




