A班のなりたち
はいはい、と気のない返事で速度を落とした運転手はまだジャンを寝かせる気はないようだった。
「あのさあ、ジャンはルイのこと、どんくらい知ってんの?」
「どんくらい?」
そこで自問した。
自分は『どんくらい』あいつのことを知ってる?
こたえは、「ほんのすこし」だ。
「『ほんのすこし』?」
「ああ。名前とか出身地とか、書類でまとめられてることと、あとは、いままでおれたちの前でみせてきた、つかみどころのない性格と相手を安心させる雰囲気をもった男」
「ジャンって、いつからA班にいるんだよ?」
「十七のときから。 そんときはニコルとルイがいて、そのあとでケンとウィルがはいってきたんだ」
「最初は四人?」
「強硬班ってのはK,M,J,の三班で活動してたんだ。 ―― そこに、バートが入社したことで、いちどなくなってたA班を復活させて四班にした」
「なにそれ?バートのための班ってこと?」
「『ため』、というより、所属させられる班がどこにもなかったんだ。 だから新しくバートに班をつくらせた」
つくらせた?とザックが首をかたむける。
「ああ。ガーバディ警備会社が未成年者を雇うっていうことをはじめて間もないときだ。 ―― 会社に入れて研修を終えてどこかに所属させて仕事をおぼえさせるのかとみんな思ってたが、社長はそんなふうに考えてなかった。ヒュー・テレスは雇い入れた未成年は即戦力だとみなしてたんだ。 実際、すぐに現場に投入されても平気なやつばっかだったしな。 ―― だけど、そういう考え方は、警察官に否定された」
「ああ、知ってる。『こどもをつかう仕事じゃない』とか、だろ?」
世間の評判も同じで、『こどもに危険な仕事をさせるなんて』と、批判と同情があつまった。




