でかく白いカラス
たしかにあまり気持ちのいい出来事ではなかったが、そんなもの家にはいると忘れてしまった。
食事をして本を読み、会社から呼び出しの連絡がはいり、でかけようとしたとき、ふいに、窓のほうに《白い》ものがみえた。
ルイの住むアパートは古いつくりのもので、数は少ないが、その窓は縦に長く大きい。
外枠にはおおげさなほどの装飾も施され、窓ごとにせまいバルコニーもついている。
花の鉢を三つおけるほどの広さだが、外壁と同じ石でつくられ、凝ったデザインの柵もつけられている。
そこに、白く大きな鳥がとまっていた。
ルイが知っている『白い鳥』のどの種類にもはまらないが、さっきみたばかりの『鳥』と、同じかたちをしていた。
つまり、カラスだ。
だが、でかい。
動物園でみた猛禽類よりも大きいかもしれない。
《それ》が、こちらをむいてとまっていた。
なぜか、ひどくこわくなって顔をそむけたのに、グウアアア、と《それ》が鳴き、ルイはしっかりと、その『カラス』をみてしまった。




