《お客》とトランク
今回の警備官への警察からの『要請』は、違法薬物売買の小さなグループを捕まえる手伝い、というもので、A班からはルイ、ザック、ケンの三人のみがひっぱりだされている。
むこうの方で小さな光が二度点滅した。
それは、墓地の中央にある小さな礼拝堂に、待っていた《お客》がはいった知らせだった。
近くの茂みにいっしょに待っていた警察官たちが先に建物へとむかう後ろにつく。
反対の茂みからでてきた警察官たちは、《お客》たちが乗ってきた車をおさえるべく、別の方向へすすんでゆく。
礼拝堂の正面になる大きな扉が警察官によってけやぶられ、大声に銃声がまじり、すぐに窓が割れる音が辺りにひびいた。
警備官三人は、外でそれを眺めている。
「あれ?窓割らないようにって指示だったよな?」
ザックが音をたてて砕けてゆくステンドグラスをみやり確認した。
「《お客》の仕業だろ?」
ケンがわらう。
「やっぱさあ。歴史的価値ある建造物って、みんなで守らないとね」
いいながらルイが助走をつけ、発煙筒を建物の中へ投げ込んだ。
すぐに、防護マスクをつけたケンとザックが、中に走りこんでゆく。
悲鳴の数がふえたが、騒動はながく続かなかった。
建物から煙といっしょに出てくる警察官たちは、押収した薬物の入ったトランクと、おとなしくなった《お客》を抱えながら、息苦しそうにマスクをはずしている。
ザックも外でマスクをとったとき、その煙にむせかえった。




