こわい夢
救急車で運ばれるのをみたときは、ほんとうにあぶないんじゃないかと心配したのに、次の日にはもう帰りたいと病室で騒いだらしい。
「よかったよ。あんなふうに倒れたあとでもケンはいつものケンだ。 まあ、担当の看護師の女の子を困らせたとか、担当の医師を脅して退院証明をかかせようとしたってはなしは、レイには黙っていてやろう。さて、―― 」
そこでジャンは立ち上がり、ルイとケンを半々でみくらべた。
「どっちが先にはなす?」
「・・・おれから、はなすべきだろうな・・」
ルイがあきらめたように立ち上がる。
「ごめん。いろいろおれのせいだ。みんなに黙ってたから」
「体調がわるいのを?それとも、―― ほかに?」
ジャンがしずかに聞くのにうなずいた男は、下をむいたまま自分の頭の後ろをたたき、「ほかにも黙ってたことがあって・・・」と言葉をさがす。
「その・・・。もう、二か月ぐらい前から、眠れなくなってた。 理由ははっきりしてるんだ。体調とか心配ごととかじゃあなくってさ、それがその、・・・眠れなくなった原因が、変な夢のせいなんだ・・・」
「え?《こわいゆめ》ってこと?」
思わずうれしそうな声をあげたザックの口をウィルがひとにらみで閉じさせる。
ルイはそんなザックにすこし笑ってみせ、認めた。
「そう、こわいんだ。―― 二か月前くらいに、休日に買い物して帰るとき、カラスが・・・、上を飛んできて・・・・・」




