ドーナツは持ち帰り
「《墓あらし》の監視補助だったんだろ? あんな場所を好むのは、頭のおかしい泥棒か売人ぐらいしかいないだろうから、おまえらに見張られて、墓の中で眠る人たちもひとあんしんだな」
言うと、ドーナツとコーヒーのおかわりをたのむ。
それを注意すべきか悩みながら、「でもおれたちがでばってから、その『墓あらし』はでてないんだ」と告げる。
「・・・じゃあ、一週間以上おきてないのか。ふうむ。もう飽きたんじゃないのか?」
追加された皿をうれしそうにながめると眉をあげてわらった。
「それならいいんだけど。 ―― なあ、ノア、ドーナツは制限されてるってレイからきいてるけど」
いまにも口にはいりそうだったドーナツは、しぶしぶと皿にもどされ、持ち帰ることにすると宣言した。
墓場で捕まえた薬の売人についての書類の仕事を警察にきておわらせたジャンは、仕事あがりのノアに会い、このドーナツ屋に連れてこられたのだ。
たしかに、たまに食べるドーナツはうまいが、ノアは仕事中でも店をみつけると入らずにはいられないほどのドーナツ中毒で、まわりの若い連中につねに監視されながらドーナツを食べるこの頃だ。
レイっていえば、とノアがウエイトレスに皿をわたしながら声をひそめた。
「 ―― ルイと、ケンはどうなった? こっちじゃ警備官をねらった《テロ》でやられたってことになってるぞ」
ジャンは眉間に指をおしあててうなずく。
「わかってる。・・・そう疑いたいのも、もっともだ」
「やっぱり違うのか? ―― だろうな、あのふたりがそろってそんなのにあうわけないな。・・・まあ、おまえんとこのチーフが、うちのあちこちに出没するんで、そんな噂になったんだ」
気にするな、というノアの顔を、ジャンは間の抜けた顔でみかえしてしまった。




