検察局のエバ
明るい会社の食堂兼休憩室。
テーブルの上の灰皿には、つぎつぎと小銭がつみあげられてゆき、すでにかなりの山になっている。
「ほんと、残念だわ」
同じテーブルに座る女は、たしか、検察局の人間のはずだ。
ザックの頭をのぞいたように女が笑い、「今日は休日なの。だから検察局有志一同よりの『花』をとどけにきたのよ」と、その籠をテーブルにおき、首をふった。
「残念よ・・・」
「まあ、たしかに。 エバ、今度のパーティーにケンをひきずっていくはずだったんだろう?」
「ウィル、『ともなって』がただしい言葉よ?」
にっこりとほほえむ女はため息をつき、「かわいい《年下の彼氏》と行くって言っちゃったのよ。なのに、ケンが入院なんて・・・」と首をふる。
「え!?ふたりつきあってんの!?」
ザックが声をあげるのに、「そんなわけないだろ」とニコルが笑って首を振る。
エバがはずかしそうに、「すこしまえに恋人と別れちゃったのよ。 でも今度のパーティーは同期がたくさん集まるんで、つい・・・」
見栄をはってしまったと眉をさげ、「でもね」といい笑みをうかべた。
「 ―― おととい病室でそれについてケンに文句をならべたててたら、ちょうどお見舞いに来た、『マーク』っていう人に出会ったの」
「まさか・・・」
ウィルのいやそうな顔をみないようにした女が満面の笑みで、「パーティーには、マーク・リーが行ってくれることになったの~」と歌いだしそうに両手をひろげる。
「彼、ケンより純真な感じがあふれでてるし、すこしシャイなとこがいいわ」
「無傷でかえせよ」ジャンの言葉に唇をつきだした女が、「ケンの事件だけど」と声の調子をかえた。
「 ―― 事件じゃないって本人は言い張ってるけど、もし本当に事件だとしたら、はやめにうちにも連絡いれてね。 『警備官』を狙うやつがいるなら、『警察官』もねらわれるわ」
まじめな顔でテーブルに身を乗り出すのに、ジャンが片手をあげる。
 




