安らかな眠り
なるほど。
掘りだした土が山となった墓場の棺は、蓋がずらされたままだが、風化した遺体に添えられている宝石類や色の変わった銀器などは残っている。
「目当てのものだけ盗み出してるんじゃないの?」
金貨だけとかさ、というウィルの指摘は金貨も残った棺の写真で否定された。
「いやがらせか?」
ケンのまっとうな意見にニコルが丸い目をおくり、同意をしめすが、「どういう理由でだれにむけてだよ」とザックに質問され肩をすくめる。
「 ―― まあ。理由は犯人をつかまえてからきけばいいだろ? ともかく、安らかに眠ってるのを掘り起こすなんて、 ―― 迷惑だ」
班長である男のような口調で副班長が断定するのに班員が納得したところで、明後日の仕事の確認を終えれば、ケンがふきげんそうに立ち上がり、レイがもどってこねえ、と奥をみやった。
これが解散の合図だとみてとったウィルは今度こそと急ぎ足で玄関へ向かい、残りの男たちは気配をひそめて奥の部屋のようすをみにむかった。
カーテンもかかっていない窓がひとつしかない部屋のベッドには、疲れた顔のルイが死んだように眠っており、横に置いた椅子にこしかけたレイは、ルイの顔に頭をつけるように突っ伏して寝ている。
みんなにやけた顔でベッドをとりかこむ。
「こりゃあ、ふた月ぶりの睡眠って感じかもな」
ニコルが笑いをこらえるようにルイの顔をのぞく。
「もともとぼんやりした雰囲気だから、きづかれねえっておもったのかな」
ザックが腕をくんでみおろす。
「そりゃないだろ。バートににらまれて医務局いけって言われてたからな。行かなかったけど・・・」
ジャンは苦笑する。




