敏感か鈍感か
白い鳥の羽が、ベッドの上にまいおちる。
ルイが身じろぎし、レイがその額にそっとふれてささやく。
「だいじょうぶだよ。だいじょうぶ」
鼻にしわをよせたケンがつまらなさそうに部屋をでた。
居間にいけば、ウィルがわがもの顔で革張りのソファにグラス片手にくつろぎ、勝手知ったるキッチンでつくったパンケーキをせまいテーブルで向かい合って食べるザックとニコルが振り返る。
ケンはしかたなく、いまみてきたことをそのまま伝える。
「 ―― ルイがレイを嫌ってるって?」ニコルが目をまるくし、「まさか」とザックが続ける。
「嫌ってるっていうんじゃなくて、好きじゃねえって」
ケンの訂正に、おなじだろ、とニコルが口をまげるのに、だまっていたウィルが、「ぼく、なんとなくわかるなあ」と手にしたグラスをまわす。
「 ご存じのとおり、ぼくも『貴族』なんて肩書がくっついてるもんでね。 いろんな場面で、微妙な反応にあうよ。レイもバートも実業家として成功した家系の人間だから、ゴシップ誌においかけられて変なことかかれるのにも慣れてるだろうけど、実際に会った人とかにとられる態度には、いやでも敏感になるよ。 ―― 身近な人になればなるほどね」
「おまえ、いがいと繊細だな」
ケンのからかいに貴族は肩をすくめる。
でもさあ、とザックがパンケーキを口にほうりこみ、行儀悪くつづける「やっぱレイの勘違いなんじゃねえの?それともおれたちが鈍感なのかな」
ともかくさ、とウィルがグラスの中身を干し、ザックの皿横にグラスをおくと玄関にむかう。
「明日は休みだし、ルイはぐっすり眠れそうだし、残り時間はずいぶん減ったけど、ぼくは楽しい夜をすごしにいくよ」
浮かれた様子でがちゃりとあけたドアのむこうに、驚いた顔のジャンが立っていた。
「なんだ?おまえもルイの様子みにきてたのか? よびだす手間がはぶけたな」
嬉しそうに言った副班長は、抵抗するウィルの腕をつかんではいってきた。
 




