ひらり
なにか寝言をうめいたルイの顔に、ケンが丸めて投げたタオルがあたる。
「 ―― さっきの、いったいなんだよ?」
ケンの機嫌の悪い声に、ルイの顔からタオルをどけたレイが小さくわらう。
「うん、なんだかルイって、いつも落ち着いて穏やかにしてるだろう? だけど、ぼくと話すときだけ、ほんのちょっと、・・・困ったような逃げ出したいような感じになるんだよ」
「気のせいだろ?」
ケンの言葉に顔をみあわせた男が微笑む。
「ぼくのこと、気遣ってくれてる? ケンにだって、好きになれないやつっているだろう?」
ほら、前に警察官からはずされたシェパードとか、とわらうレイに、鼻をならしてみせる。
「ぼくだって、いるよ。それに、バートのこと尊敬してる人にしてみれば、ぼくみたいのがそばにいることが嫌だろうし」
「ルイがそういうやつだっていうのか?」
「わかんないけど。でも、ジャンだって、最初ぼくに、『頭の悪いガキがバートのそばにいるのがきにくわない』って言ってきたし。 実際ぼくがそばにいるから、バートに迷惑かけることがあるし・・・、ほら、このまえのドーンズで棚が倒れたのも、」
「だからあ、あれは違うって何度も言ってるだろ?」
「でも、ぼくがいろいろ迷惑かけてるのは、ほんとだし・・・」
「おい」怒った顔のケンが、安らかな顔で眠るルイをみおろしベッド横に立つ。
「これいじょうまだいうなら、ルイの首しめる」
「え?なんで?わ、わかったから、もういわないって」
どういう理由でそういうことになるのかまったくわからないレイは、とりあえずルイをかばうようにシーツをかけなおそうと、おおいかぶさった。
ひらり、と。
 




