好かれてない
ベッドの足元であぐらをかく男は「《ふつう》の睡眠導入剤」とそっけなくこたえる。
「『ふつう』の?そんなわけないだろ?まだからだが動かないし、あんな眠くなるなんて」
いいながらもがくように体をうごかすと、だめだめ、とレイに肩をおさえこまれる。
「たのむ。レイ、もうほんと、」
「だめだよ。きみはこれから一週間療養休暇だからね。もう会社に申請してあるから」
「なんで!?本人が申請してないのに勝手に」
「お医者の診断書をもとに、ジャンがだしたんだよ。それで、入院じゃなくて自宅療養ってことで、看護師じゃなくてぼくが付き添うからね」
「はあ?な、なんでレイが、」
「 ―― わかってるって。 ぼく、・・・ルイにあんまり好かれてないもんね・・・」
「な、・・」
いきなりのその言葉に、いつものようにとっさの返しがでてこない。
おだやかで意味深な笑顔も浮かべられない。
「ごめん。いいんだ。気にしてないし、わかってるし、えっと、ぼくは、ルイのこと、すきだよ」
「か、勘違いだよ。レイ、おれは」
シーっと、子供にするように指をたてたレイがもうかたほうの手で、ルイの額をやさしくなであげる。
「わかってるから、へいきだよ。ルイ、へいき。 大丈夫なんだよ。ぼくは傷ついてないし、きみのことがすきだ。みんなも心配してる。 ―― だから、いまは目をとじて。ぼくがみてるから。ほら、とじて。ねむって」
その声に命じられるのが心地よいかのように、ルイはそっと目をとじた。
レイのことが好きじゃないって?
そう。
それはあたってる。
だってレイは、―――
 




