ザック・アシモフは警備官
警備官と警察官で事件を解決する世界のはなし。設定ゆるふわご容赦を。
警備官新人のザックは今日も明日もA班でがんばるはずだった・・・。
A班が活動停止になるはなし。
―― ※※※ ――
白い羽が舞っていた。
男が立ち、その腕に女が抱えられていた。
そして、 ―――
―― ※※※ ――
暗い場所の暗い中に身をひそめていたら、ふいに、隣にいる男が「カラスって、いるだろ?」と静かな声でのんびりとたずねた。
「カラス?ああ、あの黒い鳥だろ」
ききかえすと、返事ともため息ともしれないものがかえる。
会話はそこで止まった。
「それが?どうしたって?」
少々気の短いザックは、眉をよせて続きを催促した。
なのに、相手は黙ったままだ。
「なんだよルイ、カラスがどうしたって?」
「おまえら、うるせえよ」
すこし離れた場所から、低い声が注意した。
話しかけたのはルイのほうだといいたいのをこらえ、ザックは姿勢を元に戻す。
ザック・アシモフは警備官という職に就く若者だ。
この国には犯罪を取り締まる職務に、警察官と警備官という二種類があり、ザックはそのうちの『裏方』とよばれる警備官についている。
なぜ、『裏方』とよばれるかというと、表にでないようにしているからだ。
本当は新聞にのってもいいような仕事をいくつもしているのだが、それは公表されない。
ときどき載ってしまうのは、警備官が負傷したり、亡くなったりして、名前が出ざるを得ない場合だ。
そんな、《負傷者》の名前を公表せざるをえない事件があったときに、新聞で警備官のことを知ったザックは、『裏方』に憧れ、その《負傷》した人物が所属する部署を希望し、その人物がひきいる班にはいることができた。
ゆえに、彼は、自分を《ついている》と思っている。
たとえ、警備官の仕事が思っていたよりも厳しくて、同僚が自分のレベルよりずっと上のやつらばかりだとしても、へこたれる気はなかった。




