役立たずとダンジョンでパーティーを追放されたが、真の能力に目覚めました。これからは好き勝手しま………。
言っていた追放ものです。大したものでは有りませんが。
こんな薄汚い路地裏に似付かわしくない……。え? 見えるんですか? 僕が。驚きました。僕を見える方なんて初めてで……。成仏ですか? さあ、どうしたら良いのか分からなくて……。え? 浄化? そんな事出来るのですか? ……交換条件ですか? 黒歴史? ……まあ、そうですね。もの凄く有ります。粋がっていた頃の思い出が……。
僕は冒険者をしていました。動機はそれ以外に生きていく道が無かったからです。
僕の生まれた村は結構、大き目の集落だったんですが、流行り病で多くの村人が亡くなり、その後、移住して来る人も居らず、随分と小さくなってしまいました。亡くなった中には両親も居ましたが、そう言った子供達は少なくありませんでした。生き残った大人達全員で育てられた様なものです。村全体が孤児院の様なものでした。
そんな中でスキルを調べられて……、ああ、失礼しました、平民とは違い、貴族は生まれて直ぐにスキルを調べるのでしたよね。
僕が居た村では7才〜成人する15才の間で調べる事になります。他の……、街に住む様な平民はどうか知りませんが、赤子のスキルを正確に一瞬で調べられる様な魔導具等、村1つで用意出来るものでは有りませんから。
序に言えば、魔導具を扱える人も個人宅では用意出来ません。ですからある程度貯めて於いた資金を使って、何年かに1度、スキル調査を行うのです。そして調べている短くはない時間、大人しくしていなければならないので、ある程度聞き分けられる年齢から調査を受ける事になります。
スキルにて適正が明らかになり、皆、それに見合った道で生きていく事になります。どうしても村では発揮出来ないスキル機能では無い限りは、皆、村でスキルを使って生きていきます。
ですが、僕にはそのスキルが無かった。
そう、スキル無し。稀に居るんですよね、そう言う人間。どの分野にも適正が無いので生きていく事に困るんです。だって足手纏いにしかなりませんし。で、そう言う人間って需要に対して成り手が足りない職や需要はあるけど、限られたコミュニティ内で偶々そのスキルを持ってる人間が居なくて成り手が居ない職にに付くしかないんです。僕の場合は排泄物の片付けでした。が、僕はそれが嫌でした。
……ええ、後悔しています。
何で大人しく安全な職に付いて置かなかったんだろうって。真の才能なんて粋がって、村を出て行って……。学もスキルも信用も無い余所者なんて、冒険者くらいしか付けないのに。
戦闘スキル? そう言ったものを持っているなら傭兵になりますよ。学が無くても腕っぷしだけで伸し上がれるし、上手く行けば1代貴族の騎士になれるんですから。
とにかく僕は結局、どうしようもなく冒険者の仲間入りです。馬鹿みたいでしょう? しかも僕はそんなゴロツキの集団を仲間だなんて思っていたんですよ、本当、どうしようもないでしょう?
そりゃ冒険者は命の危機もありますから、それを常に一緒に乗り越えていたら、連帯意識から仲間意識に変わる事も有りますよ。でもそれはパーティー内で上手く連携行動を取れていればの話。
僕はスキル0で冒険者にしかなれない様な選択を取りましたけどね、僕みたいにスキル0だなんて奴、冒険者の中にだってそう居ません。戦闘スキルなんて持って居なくても、工夫次第で戦闘補助出来るスキルくらいを持ってるタイプは珍しくないんです。
……ええ、お察しの通り、ゴロツキパーティー内で僕は足手纏いになりました。僕なりに努力はしたんですけどね……、命のリスクが高い環境内でそれは免罪符になりません。なのにソレを理由に僕はパーティーに居座りました。迷惑がられていたと言うのに……。
追放? ええ、仰る通りです。只、冒険者ギルドのルールもあって、中々僕をクビにする事が出来なかった……、僕はそれを利用してたんです。で、その結果がダンジョン内での置き去りです。
役立たずだから、とモンスターの群れに突き飛ばされて……。追放宣言したパーティーメンバーは振り返らずに走り去りました。
そして僕はーー、真の能力に目覚めたんです。
……その時期にはまだ判明していなかったんでしよね、スキル0とは、世界のバランスを壊しかねない程の才能に、自身の心身を蝕ませない為に、壊されない為の自衛手段としての封印だった事を。
封印を破るには命の危機と深い心傷、それから才能の変化に心臓が止まらない程度には鍛え上げられた肉体、これは数年単位の肉体労働で会得出来ますが……、とにかくそれら3つが必要で、僕は条件を満たしてしまっていたんです。
真の能力に目覚めた僕は追放した仲間に「ざまぁ」する事が出来ました。可愛い女の子にも囲まれました。身分が高く、高潔な貴族に気に入られました。婚約者に娘を紹介されました。一夫多妻が当たり前だったので、ハーレムを築きました。そして強大な力と権力で僕は世の中を変える事を決めたんです。具体的にはスキル0や大した事のないスキルだと馬鹿にされている様な人を積極的に雇って、優遇したんです。「正当な評価」だと言って……。
そうして何時しか貰った領地を独立に等しい状態に持っていった僕は一国の王に等しくなっていたのです。僕は紛れもなく幸せでした。幸せだったんです。死ぬ最後の瞬間まで……。
それから100年。僕はこの国の貴族に生まれ変わりました。どう言う訳か前世の記憶を持っていた僕はしかし、スキルの力までは全く受け継いでいませんでした。それは残念でしたが、僕の今生のスキルは優れていましたので、諦めが尽きました。しかし……。
家庭教師からスキルに付いて学んで……、とんでもない事を知ったのです。今生では国単位で克つ何処の国でも、身分に関係無く、生まれた瞬間、自動でスキル0を検知出来る様になっている事、そして検知したスキル0の赤子は直ぐに国の名の元に引き取られ、そして殺される事を……、前世の僕が、史上最凶の犯罪者とされてしまっている事を……。
何故、そうなったのか。
それは僕の前世の所業が原因でした。僕の力は戦闘能力と自身の回復力に振られていた事もあってか、僕を敵に回す事は出来ないと大部分が恐れていたのです。そんな僕が高位貴族と縁を持つ事になったのは、監視の意味が強かったのでしょう。僕を信じ切っていた例外は僕に優遇された者くらいですね。
……彼等を優遇した為に、本来ならばそれなりのスキルでそれなりに社会を立ち回っていた筈の人間が有り得ない程の不遇に置かれる事も多くありましたが、誰も文句を言えず、或いは言ってしまったものは不必要な被害を受け、失意の中、亡くなってしまう事も珍しくなかったのです。
ですから僕の死亡後、僕の死体は徹底的に解剖され、色々調べられた様です。勿論、調査や医療、スキル認識に特化した能力を持った者が調べた訳ですが……、結果、先に話した条件も調べられた様です。そして二度と僕みたいなイレギュラーが出ない様に徹底的に対策を取れる様に研究したんです。
ゾッとしました。
僕のせいで罪の無い赤子が殺されている。民達はそれに疑問を持たない様に誘導され、スキル0の赤子を産んでもそれを非難される様な事が無い様にもしたので、赤子を差し出す事にも協力的で……。僕は、僕の正義の裏で起こっていた事を何も知らなかった、知ろうとしなかった事を思い知らされました。
圧倒的な力で変えても、それは恐怖に因るもので、抑止力の保持者が居なければ、直ぐに元に戻る……。自己満足の恐ろしさを知りました。
そして僕は動けなくなりました。
そう、何もしなかった……。何もしたくなかった。漫然と生きていたら、ある日、より優れたスキルの保持者に陥れられて……、そして死にました。僕の怠惰が許せなかったそうです。
そして僕はゴーストになってました。前世の記憶も、こうしてゴーストになった原因は分かりません。分かりませんが……、僕は赤子が殺される事を耳に入れたくなくて……、この様な誰も居ない路地裏で佇んでいるのです。
………僕の話はこれで終わりです。
ええ、ありがとうございます。漸く僕は終われるのですね……。
お読み頂きありがとうございます。大感謝です!
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