魔力訓練
「おっはよー!」
ドスン、と寝ている俺の体にシルフィがのしかかる。
昨日は夜の森でいろいろと検証をしていたから結構眠い。正直今日はやめてほしかった。どうせ言っても聞かないだろうけど。
「昨日のあれ、すごかったね!」
まだ瞼が重い俺にそう語り掛けてくるシルフィ。
昨日のあれ…あ、影魔法か。
まあ俺くらいの年で魔法が使える奴はそうそう居ないからな。
タイムループの前では俺の魔法が発現…と言うか魔法が使えることを自覚したのは十歳を超えてからだったからな。
自覚してないだけで影縫は使っていたんだが…。
「ジン、聞いたぞ。その年で魔法を使えるようになってるとはワシらも鼻が高いぞ」
「えぇ。立派な孫を持てて私達も嬉しいですよ」
眠い目を擦りながら食卓へ向かうと、祖父に祖母が俺を待っていた。
まあ…この年で魔法を使えるのは何度も言うように希少、こうなることはある程度予想出来てた。
「さて、ジンがマロさんを助けてくれた御蔭で今年の豊作祭も無事に始めることが出来そうじゃな」
豊作祭か…良い思い出はそこまでないな…。
一回はシルフィが精神を壊しかけたし、それにアレは…アレがなければ俺達は勇者パーティーに入る事もなかったんだが…。
アレは避けようがない、としか言えない。
それまでに少しでも鍛錬をしておかなくては…。
「今日は何して遊ぶ?」
小さく首を傾げて俺にそう聞いてくるシルフィ。
「じゃあ…魔法の練習でもする?」
「いいよ! …あ、私、魔法使えないよ…」
「大丈夫大丈夫、練習と言っても大したことはしないから」
「じゃあ分かった!」
「えーっと、まずは俺の手を握って」
「えっと…こう?」
おずおずと言った感じで俺の手を握ってくるシルフィ。
「えへへ…あったかい」
そりゃあ人肌は暖かいだろうな。
「少し変な気分になるかもしれないが我慢してくれよ?」
「う、うん」
シルフィが頷いたのを見て、俺は手からシルフィの体に魔力を流す。
シルフィの体を魔力が走り、魔力の流れを形成していく。
タイムリープ以前に本で読んだ知識なのだが、幼少期より他者の協力を借りてでも良いから魔力の流れを体で感じておくと非常に強力な魔法が操れるようになるそうだ。
慣れ、に近いのだろう。
貴族や王族の間では比較的行われているらしい。
逆に平民の間では全く行われていないが…。
本来、魔力を走らせ流れを作るなんてかなりの魔法の使い手でもないと出来ない事だ。
つまりそういう優秀な魔術師を金で雇うことができることが出来る貴族や王族だけがこの教育ができる、と言う訳だ。
とても庶民には難しい話だ。
だから最上位の魔術師や騎士は貴族が殆どだそう。
だが…その魔術師役を俺が代替わりすることで、シルフィは強化される。
幸いにもタイムループ前の記憶はあるので、魔力を操る技術は人並み以上だ。魔力の総量などはまだ子供だから誇れる程ではないが…。
白魔法に目覚めることは確定しているんだし、タイムループ前はこれをしてなかったからな。
これでシルフィの地力は格段に上がるだろう。
継続しなければあまり意味はないが…。
「んっ…なに、これっ…」
若干艶めかしい声を上げるシルフィ。
…集中力切れそう。
なんとか鋼の精神力である程度魔力の循環を行った。
「今の…すごいよかった!」
どこかとろんとした上目遣いでこちらを見てくるシルフィ。
「そ、そうか」
「もっとやって!」
「い、いや、今日は無理だ」
俺の集中力も魔力も限界である。
「じゃあ…明日もしてくれる?」
「明日なら勿論だ」
シルフィがコレに案外乗り気なのはよかったが…疲れるなぁ…。
この訓練にはシルフィの強化だけでなく、俺自身の訓練も入っている。
魔力を操る方法などの感覚はある程度記憶として残っているから大丈夫なのだが、今の俺には魔力の総量が圧倒的に足りない。
これを増やす必要があるのだが…。
魔力を増やす方法と言ったら、殆どの魔術師や学者が「限界まで魔力を使え」と口を揃えて言う。
まあ実際そうだ。
保持できる魔力が足りないと体が認識すれば、より多くの魔力を保持できるように上手いこと変化してくれるのが体なのだ。
シルフィの特訓が終わればシルフィが脱力している時間で影魔法の練習をし、限界まで魔力を消費する。
そしてヘロヘロになりながら復活したシルフィとの鬼ごっこやらに付き合わされるのだ…。
四日近くも新作を放置していたバカ作者が居るらしい
誰だよ(すっとぼけ)