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影魔法

 俺が夢で見たのは夢なんかじゃなく、何等かの方法であの状態から時間を巻き戻す、みたいな奇跡が起こったのだろう。それを夢と勘違いしていたのだ。

 マロおばちゃんが落下してからの未来が明確に想像、もといはっきり分かってしまったのも、きっと一度「体験」したことがあるから。

 俺が勇者パーティーに入ったのも、それ以外に起こることも全て明確に覚えている。

 あれは確かに夢なんかではなく現実「だった」もので…奇跡にせよなんにせよ、もう一度やり直すことが出来る。

 シルフィが俺を惨殺するなんて未来をなかったことに――。

 ――未来を変えることが出来る。





「さっきまであんなにニコニコしてたのに怒られちゃった…」


 あの後お礼に、と家に招かれてお菓子を貰った。

 マロおばちゃんはそのあとすぐにお菓子を出されるなりもぐもぐと殆ど全てのお菓子を一瞬で平らげてしまったシルフィに対して、いつものように怒っていたが。

 理由は喉に詰まるからと。いつもこのような理由なので決して理不尽に怒ってる訳ではないのだが。


「まあまあ、お菓子沢山食べれたしいいじゃん」


 俺の分まで取りやがって。シルフィじゃなかったら絶対許してない。


 お菓子を食べて大満足、といった表情を見せるシルフィとは相対的に、俺の気持ちは不安と言ったもので埋め尽くされていた。


 さっきの影魔法、やはり前とは違って全く扱えない。

 影を操るだけだったのに発動までの時間が遅い。

 俺は今、他にどんな魔法が使える…?





「ごはん…食べてく?」

「いや、今日はいいよ」

「そっか…じゃあまた明日! おやすみ!」


 いつもシルフィが朝食を食べにくるのでそのお返しに、とよくシルフィの両親から夕食のお誘いが来ることが多いのだが、今日は遠慮しておく。

 どうしてもシルフィの家で夕食を食べると、その後シルフィに寝るまで拘束されて最終的には抱き枕にされるのだ。

 別に構わないが今日はやりたいことがあるのだ。







「そろそろか」


 家で夕食を食べ終え、深夜に差し掛かるであろう刻、俺はこっそり起きだして、家を抜け出した。

 目指すは近場の森。

 ここで今の自分がどれだけ影魔法を操れるのか。それを確かめる。


 今日は月がしっかりと出ている。が、森であれば影魔法は十二分に真価を発揮できるだろう。


「ふっ」


 まずは基本中の基本、影を操る。

 近くの木から伸びる影が形を変え、平面であった筈の影が立体になる。

 影は一秒程時間を掛け縄のような形に変化し、蛇のように動き始めた。


 ……遅い。

 前は一秒もかからなかったのだ。

 それにこの影、動きも遅い。

 まあ仕方ないと言えば仕方ないだろう。

 時間が戻る前のちょうど今くらいの時期は影縫(影踏み)しか使えなかった。

 と言うよりかは殆ど無意識に使ってたのだが。

 用途は追いかけっこで相手の影を踏むと相手の動きが止まるから「おっ便利だな」くらいの軽い気持ちで使っていたのだが…影縫は影魔法の中でも難易度の高い技。

 そんなつまらない事の為に一番最初から高難易度の技を使っているとは我ながら少し笑ってしまう。


 影転(えんてん)影化(えんか)は使えなかった。

 単純に子供だから魔力が足りないし経験も足りない。

 影転は練習で習得可能なのだが、前に影化を習得した時の条件がかなりピンチで…要するに影化は命の危機に晒されなくては習得出来ないのだ。

 影爪(えんそう)は影を操る際に、普通なら影をどのような形に変えるかイメージする必要があるのだが、そのステップを影爪と唱えるだけでなくす事により発生の速さと威力を向上させる魔法…というか技術なのだが、これも普通に影を操る時と同じで前と比べて発動までの時間も威力もかなり落ちていた。

 他には影葬棺桶(えんそうひつぎ)も使えないなど、俺がマトモに使えるような物は現状殆どなかった。

 …これは練習が必要かもしれないな。

 前は俺が十二歳になる頃にはシルフィの魔法の開花に合わせて影魔法の練習に取り掛かっていた…が、今から練習すれば前よりも早く強く成長出来るだろう。

 と言っても、俺の目的は未来を変えること。

 未来を変える為には…まずは俺が強くなって…シルフィが勇者パーティーに入らない事か?

 いや、それは無理かもしれない。

 …何はともあれ、今後の方針が決まった。

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