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4.金髪で、可愛い村娘

「君の名前は?」


「私はアリシアと言います。村の住人で逃げてきたら今度は兵士さんに襲われて」


 白いワンピースに腰あたりまで伸びた黄金の髪、透き通った瞳。その整った容姿は他のものとは違うオーラを放っていた。まるでどこかの貴族のようだった。


「状況は理解できた。他の生き残りは?」


「一人で逃げてきたのでわかりませんが魔物の雄叫びからすると……」


「……そうか」


 状況は最悪だった。だが今は嘆いている場合ではない。ひとまずはこの子を安全な場所まで誘導する必要がある。



「時期に周囲は兵士たちで囲まれる。急いで逃げた方がいい」


「しかし、どこへ行けばよいのか」


「たしか南の方に大きい街がある。そこだったら安全だろう」


 俺は指をさして場所を指示する。すると、



 ドドンッドドンッドン



 と同時に反対側から地響きが起こる。そちらに目を向けてみると、


「あんなに多くのケルベロスが!」


「村にいたやつか」


 血の匂いを嗅ぎつけ、ここまでやってきたのだ。


「避難はあとだ。いいか、俺から離れるなよ」


「は、はいっ」


 俺は少女を後ろへ隠し、迎撃態勢に入る。


「ですが、あんなに大勢の魔物は無理です。やっぱり私が囮になって、あなた様だけでもお逃げに」


「大丈夫だ。すぐに片付く」


 俺は全身の底から力を溜め、右手を突き出し、叫び声と共に詠唱する。


「来い俺の『神獣(シンジュウ)』。『火焔龍(サラマンダー)』!」


 俺が叫ぶと、地鳴りと共に底から紅い炎をまとった龍が現れる。そして向かってくる魔物たちを口から火炎を吹き大半を壊滅させる。残ったケルベロスを高く舞い、一気に降下し体ごと噛み砕いた。


「……すごい」


「大したことはないさ、これくらい。ケルベロスなんて普通の冒険者でも倒せる」


「な、何を言っているんですか!? 私からすれば退けることさえ不可能なケルベロスを、さらにあんな多くいるのに一瞬でなんて……」


 これがすごいのか。他の人とはだいぶ価値観が違うようだな。それはともかくだ。


 これが俺のスキルのうちの一つでもあり、体に宿っている『神獣(シンジュウ)火焔龍(サラマンダー)』。全身が炎のウロコで覆われており、呼び出せば大抵の魔物片付く。


 火炎龍(サラマンダー)は敵を一掃したあと、地に帰った。


「空は飛ばない龍なんですね」


「外に出るのが嫌いみたいでな。俺も案外困ってる」


 さて、魔物も片付いたし、あとは安全な場所へ行くだけか。


「今の騒ぎで兵士たちが来るだろう。さあ行くぞ」


「はいっ!」


 俺はアリシアという女の子を連れてひとまずは安全な森まで移動する。


「とりあえずここまでくればなんとかなりそうだな」


「そう、ですね」


 アリシアは息が荒くなっていた。女の子にこの距離はキツかったか。それに足元が傷だらけだった。


「そこに座って足を出してみろ」


「え? はい」


 戸惑いながらもアリシアは足を出し、俺は両手をかざす。すると赤い光に包まれ、傷がどんどん癒されてゆく。


「回復スキルもお持ちなんですね」


「いいや、これくらいの傷はどのスキルでも多少のケガは直せる」


 スキルには使用者の魔力を消費する。それを対象に分け与えてるだけだが、それにすら驚いていた。


「ほえぇ〜〜〜」


「さて、あとは君を街まで送るだけだな」


「あ、あのお願い、聞いて貰ってもいいですか?」


「どうした? どこか痛いのなら薬ならあるからそれを」


「――私も連れてってくださいっ!」


「……は?」


 数秒の沈黙、そのあと俺から出た言葉はそれだけだった。


「話を聞いていたのか? このままだと君は王都の兵士に捕まって殺されるだけだぞ」


「だからこそ、あなた様のお傍にいたいのです!」


「あのなぁ……これはそこらの冒険者みたいに弱い魔物を倒す仕事とは違うんだぞ」


 俺はあえて強く言った。もしここで俺が承諾すればただ頷きついてきただろう。ただ今の言葉が彼女の本心かどうかは俺には分からない。あと様ってなんだ。様って。


「……突然村を襲われて。誰も頼れる人がいなくて。たった今、私は全てを失いました」


 アリシアの姿はそれはまるで、昔を俺を見ているようだった。


「王都の兵士さんたちが言っていたことが本当なら、私は絶対に許しません。必ずぎゃふんといわせないと納得できません!」


 彼女の言葉は嘘のない本心だと思った。


「けどな……相手にするのはあの王都だぞ」


「構いません。私の手でぶっとばしてやりますっ!」


 かわいい見た目からは想像もしない言葉に俺はふっ、と笑ってしまった。


「な、なんで笑うんですか!」


「悪い悪い。たしかに王都をぶっ潰すって目的は一致してる。そしてなにより君のその覚悟、――最高だ」


「はい。だからついて行きます。アルス様と一緒に」


「よしてくれ。普通にアルスでいいよ」


 様なんて過大評価しすぎだ。俺は別に普通の冒険者だ。


「いえ、命を助けて貰った身ですから。それに……ちょっと惚れちゃいました……かも」


 ボソボソと喋り、なぜかアリシアの顔は真っ赤になっていた。最後の方は聞き取れなかったが……まぁいいか。


「そうか」


 俺は立ち上がり埃を払う。


「アリシア。今日から俺たちは仲間だ。言うなれば『王都復讐パーティ』だ」


「はい!必ず王様には謝ってもらいますっ!」


「そうと決まればさっそく出発だ。まずは近くの街で休めるところを探そう」


 俺とアリシアは地図を頼りに出発する。全ては、故郷を焼き払った王都への復讐のために。






 南のさらに奥へ歩き続けていた。王都の追手はいないようだ。さて、ここからどうしたものか。村を助けるつもりが王都の嫌われ者と、村の生き残り少女という異質なパーティができてしまった。それに、


「どうかしましたかアルス様?」


 あんなことがあったのに、隣にいるアリシアは笑顔だった。


「辛いかもしれんが、無理はしなくていいからな」


「いえ、私は大丈夫です。……って言ったら嘘になりますかね。でも私は楽しさもあるんです」


「楽しさ?」


「はい。村の人たちから、一番の美人さんって言われていて、親からはちょっと過保護気味に育てられていて」


 アリシアは俺の前でワンピースをなびかせながら振り返る。


「だから冒険者ってものに憧れているんですよ。誰かと共に生活するってなんかいいじゃないですか。冒険者は冒険するのが仕事ですよ!」


 どうやら俺は忘れていたらしい。復讐ということばかりに駆られ、あるべきはずの幸福から目を背けていた。


「そうか。ならもう心配はしない。無理はしない程度に、パーティとして十分に仕事をしてほしい」


「はい! 私にお任せ下さい」

「面白い!」


「続きが気になる!」


「早く読みたい!」


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