13.そして『勇者パーティ』は没落する〜①
「実に気分がいい。祝杯でもあげようじゃないか」
「ホントそうね。最近ストレスが溜まっていたから発散できて良かったわ」
「これも全てアルスのせいだ。まあ、今はあんなやつなど、この栄光ある『勇者パーティ』には不必要なのだからな」
「神に選ばれなかった者の末路だ」
俺が率いるパーティはとある店で祝杯中だ。シャルテとハルズもアルスを不満なく追い出せて清々しているようだ。
「ディラン。これからどうする? 三人でやっていくにあたって荷物持ちがいない」
「そうだな。今まではアルスが荷物持ちだったからな。パーティでの動きを確認するためにも、ここから一番近いダンジョンを最下層まで攻略するのはどうだ?」
「名案ね。だけど、それじゃ肩慣らしにもならないのじゃない? あそこってレベルが低いダンジョンだったし。私たちは王都で一番強いパーティなのよ」
「案ずるな。俺たちは『勇者パーティ』だ。だからこそ、そこを蹂躙するんだ。まだストレス発散したりないだろう」
「俺はディランについて行くだけだ」
「ま、あなたが言うならいいわ」
シャルテとハルズは俺の事を随分としたってくれている。それもそうだ。俺はこの王都で1番に強い冒険者。英雄』のレベルに達している。他にも一人だけ英雄』がいたが、今は追放され、称号を剥奪されている。実力に見合わないのが悪いんだ。
「では、明日の予定も決まりアルスが抜けたことにより、俺たち新たな『勇者パーティ』は今日から歴史を作る!」
新たな門出に俺たちは乾杯する。
「おいおい、これはどうなっている!?」
「私だってわからないわよ! なんでこんな高難易度の魔物がいるのよ!」
「クッ、これは……不覚っ!」
俺たちは早速ダンジョン攻略をしていた。だが、大きな問題が発生していた。二層までは順調だったものの、三層からゴーレムが出現したのだ。
「このゴーレム強すぎだろ! 魔法耐性も高いだと!?」
「ダメだわ。私の攻撃が効かない!」
「お前は『土』属性の魔法使いだろっ! これくらい対処できなくてどうする。アルスなら一瞬で消し去っていたぞ!」
「そんなこと言われたって、私だって全力でやってるわよ!」
なんとかしてようやくゴーレムを倒し、一段落する。アルスがいなくなってから、初めての戦闘は散々な結果だった。ハルズはディランに問い詰める。
「おいディラン。これは一体どういうことだ!? 聞いていたレベルと違う魔物が出現したぞ」
「俺だって知るかよ。大体、こんな魔物に手こずっているやつが悪いんじゃないのか。同じ『土』属性で砕いてしまえばゴーレムなんて瞬殺だろ」
「何? 私が悪いって言うの? これでも真剣にやっていたわよ」
ゴーレムの倒し方は主に二つだ。ゴーレムの心臓と言える核を壊したりするか、再生不可能まで肉体にダメージを与えるかだ。今回であれば近接より遠距離からの攻撃が有効的だ。シャルテの魔法が弱点となるはずだったのだが、ここまで消耗してしまうとは。
「じゃあなんだ。俺たちが今までは戦ってこれたのはアルスのおかげだって言うのか。全く、冗談じゃない!」
俺は石を蹴り飛ばす。とても苛立っていた。あいつが抜けてから、いきなり思い通りにいかないことに。
「そんな言い合っている場合じゃないぞ! 次の魔物がくるぞ!」
ドドドドドドドドッ!
大群を成して俺たちに向かってくるのは、大量のゴブリンだった。
「ふんっ、雑魚が集まったところで所詮は変わらない」
ゴブリンなど、底辺ダンジョンの魔物の代表だ。こんなところで英雄』が手こずるはずがない。
「さっきのことは反省してろ。あとは俺がやる」
自慢の槍を構え、迎撃体勢になる。無数のゴブリンを相手にするだけだ。
「くらえ、アクア・バスター!」
俺が持つ属性は『水』。そして、鍛錬を重ねた槍術はどんな魔物でさえも貫く。
ズドォォーンッ!
放たれる一閃はゴブリンを突き刺し、周りにいたやつも吹き飛ばす程の威力だ。
「どうだ! これがパーティーが強いと言われる所以だ。ゴブリンよ。その痛み、噛みしめておけ!」
「ディラン! 後ろッ!」
「おいおい、どうした? 俺の強さに酔いしれ……」
突如、痛みが走る。腹がだんだん熱くなり、それは痛みへと変化していく。目を向けると、生き残っていたゴブリンがナイフを俺に突き刺していた。
――ズシャ
刺された部分から血が大量に噴出し始める。俺は叫ぶことも困難なくらいの激痛が襲ってくる。
「この、……クソがッ!」
なんとか追い払い、止血し、持っていた薬を飲むと開いた腹部はみるみる閉じていく。しばらく経つと、ある程度は回復する。
「なんでこんなことろで俺たちが手こずらなきゃならない!」
「あら、あなたが弱かったんじゃない。人に文句を言う前に、自分の失敗を問いただしてみたら」
「そうか。お前はそんなことを言うんだな」
言い合いにハルズが止めに入る。
「さっきから言っているだろ。ここで言い合っている場合じゃない。とにかく、今はここを出ることを優先するんだ」
ハルズの言葉に一度は冷静になる。
「この前ダンジョン攻略したときはこんな手こずることはなかったのにどうして」
「俺たちは舐めすぎた。予想よりこのダンジョンはレベルが高い。それだけだ」
「ハルズが言うことが正しかったら、なおさらこのダンジョンを攻略する必要があるな」
「聞いていたのか! ここは一度は立て直して回復術師も連れて行った方が」
「いいや、他のやつからこんな底辺ダンジョンから逃げ出してきたって言われたら、俺たちの居場所なんてない。ここは無理をしてでも主の首を持って帰る。それくらいのことをしないと気が済まない」
俺はハルズの意見を否定する。このまま帰れば、俺たちは弱かったというレッテルを貼られることになる。それだけは避けるべきだ。『勇者パーティ』に敗北など許されるはずがないんだから。
「ディランの意見に賛成するわ。このまま負けっぱなしってのもムカつくし。ハルズはどうするの? もちろんついてくるわよね?」
「……行くさ。ここで仲間を置いていけるわけないしな。だが、嫌な予感がする。それだけは言っておく」
「決まりだ。安心しろ。さっきは醜態を晒したが、俺たちは『勇者パーティー』だ。負けることなんてない」
トラブルはあったものの、『勇者パーティー』はダンジョン攻略のため、最下層へと向かう。
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