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12.追放処分〜③

 その日の夜、俺は一人考え事をしていた。ここからどうするかまだ決めていなかった。今までは一人で全てを決めていたが、ここからは仲間がいる。勝手な判断がいつか危険を招く可能性がある。それと俺には時間が無い。あのクソビッチのシャルテが『魔力鑑定』のスキルで見たのを証明できる手段を見つけてしまえば、俺は処刑されるだろう。


 そのためにも、俺は最速で王都の裏を掴まなければならない。しかしそう簡単に行くものではないか。


「夜風にあたった方がいいな」


 部屋を飛び出し、アリシアたちが起きないようにこっそり歩く。王都は静寂に包まれている。


「さすがに夜中まではうるさくないか」


 少し歩きながら考える。そのまましばらく歩いていると、背後から人の気配がする。俺は常にスキル『熱温感知』で周りにいるものを把握できるのだ。しかしいくら隙を作ってもこないのでこっちから出るか。


「いい加減、顔ぐらい出したらどうですか。エリザベス王女」


「あら、バレていましたか」


「あんまり冒険者を舐めないでもらえますか」


 ルーカス王の娘。今日は助けられたが、こいつは一応王都の人間だ。策もなく近づくことはないだろう。


「今日は満月が綺麗ですね」


「ああそうですね。それで、何の用ですか?」


「あら、世間話はおきらいですか。私はただあなたもお話がしたいだけですよ」


 そのままベンチを指し、並んで座る。その態度、余計に警戒してしまう。


「すこし昔話をしましょう。私の王子様の話です。アイアーンという名の冒険者でした」


 エリザベスから出た名前が意外で思わず反応してしまう。


「彼は七年前、忽然(こつぜん)と消えてしまいました。そしてつい先日、亡くなったことを知りました。……私は、王都が……お父様が何かを隠しているように思えるのです」


「なぜそんな話を俺にする。俺とアイアーンには面識がない。そんな話をされても困る」


 今までアイアーンからスキルをもらったことは誰にも明かしていない。だからここでも知らないフリをする。


「それもそうですね。ゴメンなさい急に変な話をしちゃって。あなたがとてもアイアーンに似ていた、と言っても信じてもらえないでしょうが」


 俺とアイアーンでは体格も性格も全く違う。唯一同じだとすれば、スキルか。


「大変だろあんなお父さんは。苦労しそうだ」


「そうですね。でも私にとっては誇りですよ。この世界に一人しかないんですから。でも、あ父様が悪いことをしているのなら、私はそれを見過ごすことはできません」


「立派だな。俺と歳はあんまり変わらないのに、しっかりしている」


 たしかエリザベスの歳は14だったはずだ。その割には責務を果たそうとしている。


「そう言ってもらえると嬉しいです。ちょっとわからなくなってしまっていて。王女とはなにか。私は何をすれば人々を幸せにできるかと」


「それは俺にもわからんな」


 だが、ちょっと人生の先輩として。


「けど、あなた自身がしたいことをすればいいと思います。それが誰かに否定されるような意見でも、流されてしまうような人にはならないべきだと思います。俺にだって、無茶してでもついてきてくれるどうしようもない仲間がいますから。だから、後ろばかり見つめないでください。信じ抜けばきっと、そこに幸せはありますから」


 俺は無意識にエリザベスの頭に手を伸ばしていた。いかん、いつもアリシアにやっているからつい。だが、エリザベスは嫌がるとはなく、


「そう……ですね。元気が出ました! ありがとうございます!」


「そうか」


 俺はそっと手を離すと、バシッと両手で握り返してくる。これはどういうことだ。


「あなたの手はとても暖かい。あなた方がとても羨ましいですね。大切な人とともに旅をすることはとてもロマンチックですから」


「ああ。今はまだ始まったばかりだが、俺もどこか楽しみだ」


 こんな感情になったのは初めての感覚だ。これもアリシアたちおかげなのだろう。


「もしであれば、叡智の街『エリデン』を目指したらいかかでしょうか。あなたが探し求めているものに出会えるかも知れません」


「あの街か」


 たしか大賢者が残した伝承を基に発展した街だったな。そこにいけば王都の謎も解明できるかもしれない。


「参考にさせてもらう。これ以上は冷える。そろそろ戻った方がいいな」


「そうですね。あなたのおかげでちょっと自信がつきました」


「俺は何もしてないさ。決めたのはあんた自身だ」


「ふふっ、そうですね。ではお別れです。しばらくは会えないと思いますが、お互いが成長してまた会えるように」


 エリザベスは手を差し出す。俺は迷うことなく握り返す。俺は王都の城まで送り届けてやった。


「じゃあな」


 そう一言告げると、軽く会釈し、暗闇へと消えてゆく。


 あの時、互いの握手を通して熱意が伝わってきた。彼女に出会うことで変わったことはほとんどないが、それでも意味はあった。


「さて、寝るか」


 明日からの旅に備え、部屋に戻る。


「アルス様〜! んっ、そこは……ダメですっ!」


 直前、部屋を通ったとき、アリシアの寝言が気になっていた。だめだ。ほっとこう。


 なんやかんやようやく、『復讐パーティ』は眠りについたのだった。






 冒険者の朝は早い。


「朝方は冷えますね。私たちの旅は大丈夫ですかね〜」


「弱音を言ってる暇はない。俺には時間が残されていない。少ない時間で、俺たちができることをしよう」


「そうですね。でも、あまり一人で抱えないでくださいね。私たちはパーティですからね」


「じゃな。魔法はワシに任せい!」


 期待できる言葉を胸に俺たちは王都を後にする。


「それで、次はどこを目指すんじゃ?」


「『エリデン』を目指そうと思う。大賢者の伝承によって作られた街だ。それに見てみたいだろ。フレンダが残した街の姿を」


 そう。他のものは知らないが大賢者はフレンダである。100年の封印を経てここにいるが、普通の人は信じないだろう。


「なんと!? ワシの街があるのか! これは手厚く吟味しなくてはな」


「……いや、手がかりを調べるためだからな」


 なぜそんなにニヤつく。まあ、自分の街があるのならそりゃ嬉しいか。


「私も見てみたいです! フレンダさんが100年前になにをして、どうして封印が解かれたのか分かるかもしれませんね!」


「そうだな。なら、急いで行こう。遠くはないが日が暮れる前につきたいしな」


 俺たち『復讐パーティ』は新たな街、『エリデン』を目指し旅が始まるのだ。





「……そういやアリシア。昨日、夢でなんかあったのか?」


「い、いえ。ど、ど、どうしてそれを?」


「いや、何もなかったらいいんだ。うん」


 お互いの顔が赤くなる。目が合うと、ハッ、とそらしてしまう。


 これ以上は聞かないでおこう。このとき、アルスはまだ知らない。複雑に絡み合うの甘い恋の旅も始まっていることも。


「はぁー、何してるんじゃおぬしらは」

「面白い!」


「続きが気になる!」


「早く読みたい!」


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