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11.追放処分〜②

「アルス様。あの女はなんなんですか!?」


 アリシアはプンスカしている。そりゃあれだけ言いくめられりゃ、誰でも腹は立つよな。しかも相手がシャルテならなおさらだ。


「まあ気にするな。あいつはそういうやつだし」


「それと、パーティを抜けたって一体どういうことですか?」


「えっと、それはだな……」


 玉座を後にし、俺たちは城内の一室にいた。俺を捕らえたままでいいかの最終判断をしているのだろう。その間に俺は質問攻めにされていた。前のめりで聞いてくるアリシアに思わず距離をとる。近いって。


「ほんと、おぬしは人を振り回し驚かせることは得意じゃな」


「もう少し言い方があるだろ……」


「ふんっ、あの状況じゃ。アリシアが口を挟むのも納得じゃろ」


「ほんとそうですよ! 少しは感謝くらいされてもいいと思いますっ!」


 あそこでアリシアが助言をしていなかったからスムーズに事を運ぶことはできなかっただろう。


「それに関しては感謝する。助かった」


 俺は謝り、アリシアの頭に手をのせる。するとアリシアはポンッと爆発でもしたかのように顔が真っ赤になる。


「そ、それでいいんですよ。私はそれでゆるしますけどね」


 アリシアが機嫌を戻してくれて良かった。だが俺の中での疑問点は多く残っている。


 まず、なぜエリザベスは俺を助けたのか。理由があるにせよ、こちら側から接点を持っていたことはない。顔を合わせたとすれば、この前の『英雄(レジェンド)』の祭典のときか。王政の皆が腐ってないってことか。


 そしてルーカス王とディランとの結束関係か。これはなんとなくわかるがこれから相手にするとなると面倒だな。


 あとはこれからどうするかだな。今のところ、こちらが王都の真相を暴ける証拠がない以上、ここにいるだけこちらが不利といったところか。


「それでじゃ、これからワシらはどうするのじゃ?」


「そのことだが、もう少し考えさせて欲しい」


 今は俺がどうなるかを確認したあとだな。俺はエリザベスを待つことにした。数分後、扉を叩きエリザベスが姿を見せる。間近で見ると王女の風格はある。ドレスがとても似合っていた。オレンジがかった髪が上品さがうかがえる。


「アルス殿。あなたの判決が正式に決定しました」


「そうか。それで結果は?」


「私は無罪を主張しましたが……ごめんなさい。お父様を覆すことはできませんでした」


 謝罪と同時に髪を差し出す。書かれた内容を俺は読む。するとこう書かれてあった。



 ①アルスの『英雄(レジェンド)』剥奪。及び、ギルドによる現パーティ勧誘の禁止。


 ②今後、通達がない限り、王都へと進入を拒否、追放処分とする。



「アルス様は何もしてないのにっ!」


「すみません。これでも奮闘はしましたが」


「いやこれだけでも十分だ。ありがとう」


 王都については他の街で調べることはできるだろう。パーティについては勧誘するつもりはないしな。二つ目はこちらが証拠を掴めないようにするためか。


「今日は私の手配で宿を用意しましたのでそちらでお休みください。明日にでも出発されることをおすすめします。ここに長居してもいいことはありませんから」


「いろいろとありがとな。そんな君に悪い質問だが」


 俺はわからなかった疑問をぶつける。


「なぜ俺を助ける。お前も王都の人間だ。俺はどうしても信用できない」


「単純に、誰かを助ける善意に理由なんて入りますか?」


「いいや。悪かった忘れてくれ。その善意だけはもらっておく」


「ご理解感謝します」


 俺はこれ以上、深入れをしなかった。俺たちは手配された宿へ向かうため、部屋を後にする。




 道中、城内の廊下、前方に見えるのはディランたちだった。当然、シャルテの姿もあった。そしてもう一人。ハルズという名の、これもディランのパーティである。


「これは罪人さん。まだこの神聖なお城にいるとはね。用がないならさっさと出ていきたまえ」


「最初からそのつもりだ」


 俺は先頭に立ち、ディランたちとすれ違う。


「後悔するんだな。あの時お前は泣いてすがりつけば、まだパーティとして入れてやっていたんだがな」


 無視したかったが、このまま言われるのも気分が悪い。


「俺を用無しと判断したのはお前たちだ。いまさらそっちに行く気は無い」


「アルス。あなたはほんとバカね。だからそんなチンケな小娘たちとしかパーティが組めないのよ」


 シャルテが叫ぶ。まともに聞くつもりは到底ない。ディランパーティは全員嫌いだが、こいつは特に嫌いだ。理由はない。性格的に無理だ。



「間違った選択をした者に神の御加護などないのだ。そもそも、『火』のスキルをまともに使いこなせないのならこのパーティに不要だ」


 最後に声を上げるのはハルズだ。『風』のスキルを基礎とする魔術師だ。この王都では有名であり、巷では無敵と言われる残像拳を使う。


「ともかく、お前はこれから痛い目にあうだろう。俺たちに歯向かったことを後悔するんだな!」


 喚くなうるさい。俺は信用できないヤツらに本当の力をみせたくなかったため、わざと隠していた。その結果、俺が『英雄(レジェンド)』になる前にパーティから追放されたのだ。こっちも願ったり叶ったりだったが。


「そもそも、俺はお前たちが望む力を貸してやっていたんだがな。改めて不満があるなら聞いてやるさ」


 多少の手加減はしていたが、だとしても俺が追放される理由にはならない。


「そうか。なら言わせてもらおう。君は不必要な存在なんだよ。栄えあるこの僕のパーティにはね。実力不足で荷物持ちでももう少しまともな仕事ぶりはしただろうさ。それが理由さ。まあ、『神獣』を宿す僕と君では格が違うからね」


 ディラン率いるパーティーは王都で最も名が知れ渡っているパーティだ。なぜそこまで知名度が高いのか。それはリーダーであるディランは『神獣』を宿す冒険者、つまり俺と同じだからだ。当然、アイツらは俺も『神獣』を宿しているとは知らない。


「そうよ。私たちのディラン様に楯突(たてつ)くなんて、あなたには100年早いのよ。あーあ、早く私の前からいなくなってもらいたいわ」


「そうだな。力なき者に生きる資格はない。俺たちのパーティは最強。弱者であるアルスはこのパーティには不必要。これは必然だ」


 シャルテとハルズも続けて叫ぶ。理由を聞きたかったのだが、これは単なる罵声だ。聞いた俺が馬鹿だった。さっさと終わらせたいからここは素直に受け止めるか。


「そうか。ならもう二度とお前たちの前に姿を見せな……」


「――私たちは負けません!」


 突然、アリシアが口を開く。俺の言葉を遮るように。俺に不満をぶつけていたディランたちが見てて許せなかったのだろう。


「あなた方が何があってアルス様に恨みがあるのかはわかりません。ですが、私たちはあなた達の行為を絶対にゆるしません」


「嬢ちゃんもこのアルスに騙されているのか……可哀想に。せっかくのフィアンセが騙される姿を見ると悲しくなるよ」


「私はアルス様を信用しています! 何を言われても意見が変わることはありません」


 アリシアは相変わらず正義感が強いな。俺を擁護してくれるのは嬉しいが、無理をさせるのはダメだな。


「そうじゃ。ワシらのマスターはただの冒険者たちとは格が違う。今のうちに謝る準備でもしておくんじゃな!」


 フレンダは状況をよく理解できる。だからこそ、あの場では一言も発さなかったのだろう。とても頼りになる。


 ほんと、これだからお前たちは最高だ。素直になろうとした俺が嫌いだ。仲間のために自分を犠牲にした俺が嫌いだ。何より、この世界が嫌いだ。


 だから俺は信じる。ここでともに過ごした仲間を。だから俺は、『()()』する!


「つまりそういうことだ。勘違いすんなよ。お前たちが俺を捨てたんじゃない。()()()()()()()()()()()()。いつかそれを理解するときがくる。じゃあな」


「アルスお前ッ!」


 ディランが絶叫するが無視して歩く。お前たちがいなくても、俺には最高の仲間がいるんだ。いつかお前たちをも超え、復讐するパーティが。


「はぁー、なんかスッキリしました」


「じゃな。あやつらなど相手にもならんわ」


「その調子でいてくれ。明日にはここを出るが、最後に相手にするのもここだ。覚悟を決めておくんだ」


 城を抜け、正面に並んで立つ。ここからが本当のスタートだ。反旗を掲げ、勝つのは俺たちだ。


「――待ってろよ王都。俺たち『復讐パーティ』が相手になってやる!」

「面白い!」


「続きが気になる!」


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