カボチャ頭
「紫スライム、お前はなぜ紫スライムなのだ?」
「なぜって......生まれてこの方、紫スライムだし、なぜって言われても困るよ。」
「ではなぜサツマイモのふりをした?」
「サツマイモのふりじゃないよ。寝てただけだよ。俺たち紫スライムは寝るときには防御のため身を固くして眠るんだ。」
〈幼女〉朝顔は、寝ていて身を固くしていた紫スライムをサツマイモと勘違いしていたというわけだ。
「それでは困るのだ!あたいは王様に至急サツマイモを届けねばならぬのだ!」
そう言われても紫スライムとしても困るところなのだが。
「そもそも、なんで王様がサツマイモを届けろなんて言うんだよ。」
「それがあたいも不思議なのだ。王宮の兵士がそう王様が命令したと言ったのだ。」
「ねえ朝顔、お前、その兵士にからかわれたんじゃないのか?」
「あの兵士はあたいをからかったのだろうか?」
「その兵士を探してみようよ」とサツマイモこと紫スライムは言った。
***
その兵士は探すまでもなく王宮の門の前にいた。
〈幼女〉朝顔は、「おい兵士、王様がサツマイモをご所望というのはあれは嘘か?」と聞いた。極めてぶっきらぼうな聞き方ではあったが。
「お前はあの時の朝顔か? ははは。そんなの嘘に決まっているだろう。」と兵士は笑った。
〈幼女〉朝顔は騙されたと知り、憤怒のためその指先から、今にも兵士を絞殺さんとばかりにツルが伸びた。
朝顔も後方支援要員とはいえ生命型兵器である。いざ戦闘態勢となれば、そこいらの人間の兵士は朝顔にかなわないだろう。
ただし、戦時でなければ強力な ' 中央制御 ' の支配下にあるため、人間に危害を加えることはない。
しかし、その兵士はどうやら人間ではなかったようだ。
兵士の頭部はみるみるうちに変容し、人間の顔ではなくなりカボチャになった。
その者は ' カボチャ頭 ' と呼ばれる ' 妖魔 ' の一種であった。
' カボチャ頭 ' は口から「ィィィィィィィィ」と奇怪な音を漏らし、' 空間転移 ' によりどこかへと消えていった。