後方支援
とりあえず解説が必要だろう......。
' 歩く' 朝顔というのは、もちろん我々の知っている朝顔ではない。この世界で ' 植物型生命兵器 ' と呼ばれているモノである。開発初期には ' 歩く' ことはできなかったが、この星の終末期であるこの時代においては、' 遺伝学的品種改良 ' によって歩くことができるまでになっていた。
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ドゴリコ王国王都の真ん中あたりには、大きな川が流れている。
王宮は川の向こうにある。朝顔は川に架けられた橋を目指して河原を歩いていた。
「どっこいしょ、どっこいしょ。ああ、つかれたわ。」と彼女は言い、河原で少し休憩することにした。
' 植物型生命兵器 ' といっても戦時における朝顔の役割は後方支援であり、具体的には"水を調達すること"であった。
水を調達しツルを伸ばせば、最前線まで水を送ることができた。
今は戦時ではないがそれが朝顔の習性であったため、彼女は休憩するとともに水を汲み上げておくことにした。
川が流れているがそこから水を汲むのではない。朝顔は根を地下深くまで下ろし地下水脈から水を吸い上げるのである。
朝顔は根を下ろすと顔をギュッとすぼめ一気に水を吸い上げた。水が彼女の根から茎そして花へとブクブクと吸い上げられていくのが見て分かる。
朝顔の顔はプクッと大きくなってはしぼみ、また水を吸い上げてはしぼみを繰り返した。
水は ' 朝顔・一時亜空間 ' へと転送される。