カボチャの山
スライム達の楽しい祭りが終わった後、一週間くらいして、最初の患者が現れた。〈ヨゲンシャ〉ルキウスが予言したカボチャになるという奇病である。
この祭りは彼らにとって本当に楽しい祭りであるため、一週間たってもまだ祭りの余韻に浸っている者もいるくらいであった。
「楽しいお祭り~♪ 楽しいお祭り~♪」とその子供のスライムは歌っていた。
「お前はいつまで浮かれているんだい?」その子の母スライムがそう言った瞬間、彼女はカボチャになった......
それは、まぎれもなくカボチャであった。朝顔達が出会ったカボチャ頭のような者ではなく、まさにカボチャなのである。
「―――?―――」
「おか......お母さんがカボチャに......カボチャに......」
子スライムは、茫然としやがて泣き始めた。
その様子を見ていた、大人のスライム達は〈ヨゲンシャ〉ルキウスを呼び出した。
「......ルキウスさま......ルキウスさま、あの子のお母さんがカボチャになってしまいました」
ルキウスは「うむ」と言って、母スライムであったカボチャに手を当てた。そして、何かを感じ取ったのか「そうか」と呟いた。
「少年よ、もう泣くでない。カボチャになることは決して悪しきことではないのだ」
ルキウスはそう言うが、子スライムはまだまだ母親に甘えたい年頃である。しばらく、泣きじゃくったままでいた。
しかし、その奇病は次々と発生した。あちこちでスライムがカボチャになっているのである。
ルキウスは〈ユウシャ〉ガイラスを呼び、カボチャとなったスライムに触れたとき感知したことを伝えた。
「滅びが近づいている」
〈ユウシャ〉ガイラスもまた「そうか」と呟いた。
〈ヨゲンシャ〉ルキウスの指示のもと、カボチャになったスライムは一箇所に集められることになった。
日を増すごとにカボチャは増え、山のように積み上げられた。当然、スライムのままでいられる者はどんどん数を減らしていった。
ところがある日、そのカボチャの山はうっすらと緑色に発光した後、忽然と消えたのである。
その翌日、訪問者が ' スライム界 ' に来訪した。妖女の洋館のある草原に〈ダトゥル・ドゥ・ジョサ〉が現れた時と同様に、世界は闇に包まれた。
その ' 訪問者 ' はドゴリコ王国の伝承においては〈ゾッグ・ドゥ・ソトホート〉と呼ばれる者だ。' The Beyond One - 彼方の者 ' と呼ばれる場合もある。




