ユーフルの妖女
妖女の故郷であるユーフル地方とは、ドゴリコ王国から徒歩で一日くらいかかる場所にあるいくつかの集落を指す。
ユーフルのダンスは複雑なステップだ。優雅というよりは情熱的なダンスである。
妖女はそのダンスステップを器用に踏んだ。
かつてはダンスの盛んな土地であった。かつてはというのは、ダンスを踊る人間がいなくなったのではない。人間そのものがいなくなったのだ。
ユーフル地方に今は誰も住んでいない。
妖女は、
「あなた達、あたしの家においでなさい。そして、一緒にランチを食べましょう!」と言った。
「何でお前の家にいかねばならないのだ? あたいは今、忙しいんだよ。」
「幼女さん、人生はダンスよ。踊るの。踊るのよ。」
「何を言っているのだお前は!」
人間になったばかりのサツマイモは、二本足で歩くのにまだ慣れていないため、ふらふらとよろめいた。
カモノハシは落としてしまった ' オレンジ色に光る石 ' を拾うと大事そうにカバンの中にしまい、よろめいたサツマイモを支えてあげた。
「おいおい、大丈夫か? しかし、いきなり人間になるとは、お前もなかなかファンキーなスライムだな。」
「俺は人間になったのか?」
「まあ、人間だな。体色が"薄ムラサキ色"の人間は初めて見るが。」
「人間というのは、歩くのが大変だな。二本足というのがこんなに不自由とは思わなかったよ。」とサツマイモは言った。
「それよりお前達、妖女にランチに誘われたぞ! 行くか? 」〈幼女〉朝顔はサツマイモとカモノハシに聞いた。
「ランチか! いいな。俺はハラが減ったぞ。」とカモノハシが言う。
「あれは妖女だぞ、ついて行って大丈夫か?」
「大丈夫だよ。」とカモノハシはそっけなく言った。
野良とはいえ彼もカモノハシである。一応、' 時 ' を見ることができる。
カモノハシが大丈夫というので、朝顔達は妖女の家に行くことにした。




