プロローグ
誰でも世界を自在に旅することができる
ぼくにとって父さんはこの世界のすべてだった...んだと思う。
父さんが死んだことに未だ実感は無いのだけれど。
ずいぶんと守られていたんだなと......今更になって思う。あれは家族三人の幸せな時間だったんだ。
父さんはスライムの中でも上級スライムだった。昔はドゴリコ王国の騎士団長お付きのスライムだったんだよ。
' ニンゲン ' はもうみんな死んじゃったけどね(たぶん)。
母さんはずるい人だよ。父さんが死ぬ直前にどこかへ行っちゃった。
途方に暮れちゃうよね。これからどうしよう。
それにしても、この森もだいぶ "ヨウマ" が増えたな。"ヨウマ"と言っても最下級の"チミモウリョウ"どもなのだけど。
仲間のスライム達ももうこの森を捨てようと言っていた。
そうか、ぼくもどこかへ逃げなくちゃいけないな。"ヨウマ"と戦って勝てるスライムは父さんくらいだったもの。
そうだ、この森を抜けたところにある小屋まで行ってみよう。
あの小屋には ' 不思議な少女 ' がいる。おかしなことを言うからみんな怖がって近づかないけれど、魔法が使えるって噂なんだ。
魔法なら"ヨウマ"と戦えるよね(たぶん)。
そうして、スライムの少年は『森の向こうの小屋』へ行くことにした。