超能力開発メソッド
娘アサリの通う魔法科高校から手紙が届いた。独自の開発プログラムにより娘さんの新しい能力が開花しましたという。その能力はスマイル0円という能力だそう。
アサリが寮から帰省してきた土曜日、早速、開花したっていう超能力をやって見せてよと頼んだところ、ニコっとやってくれたが、何もおきない。「やっぱり」と言うアサリ。肉親や女性には効かないのだそう。男性にだけ効く能力で、日本でこの能力者が見つかったのは、国民的大女優吉永小百合につぐ2人目だとか。ニコッとすると周りのすべての男を惚れさせることができる能力という。政府は大変注目しているそうで、何故ならこれからの戦争はスマイル0円の将軍 対 スマイル0円の将軍 となるであろうと予想されるため、この先アサリは海外派遣や災害救助の自衛隊に同行していろんな実験調査を行う予定だそうだ。それはそれはこれから楽しくなりそうでなによりだ。そして教授たちにもこの魔法がかかっているのでアサリは出席さえしていればすべての学科で優をもらえるということで嬉しそうだ。
ちなみに他のクラスメイトたちはどんな能力なの?と聞いてみた。ゲームが好きでプログラマー志望の湯川くんの能力は「ゲームをしている時の集中力が2倍」というものだが、勉強にはまったく応用でき無いそう。だが報告書にするデーターをとるため同じゲーム2倍の能力をもつ6人の学生がこの土日ぶっ通しで機械につながれゲームさせられているそうで、なかなか大変そうだ。で、ほかには?ほかには?と好奇心がわいてきたが、あとはそれほど、なんというか、平凡で、何に使って良いやら分からない凡庸な能力ばかりのようだ。寮の同室のヒナノちゃんの能力は身長を実際よりも5センチ高く見せる脳力で、これはパッシブスキルで常時発動しているのでかなりのエネルギーを消耗してしまうため、ますますヒナノちゃんの身長が伸びない原因になってしまっているそう。腰まで届く美しい髪が自慢のレイナちゃんは、髪を搔き上げるたびに「サラサラ〜」という効果音が出せる能力。イケメンを数十メートル先から嗅ぎ分けられる能力のノアちゃん。そんな能力を何にいつ利用するのかわからない能力もすべて登録された。
能力は多感な歳頃に強くずっと強烈に思っていた想いが芽生えるもので、外見に関する能力が多いのはそのためだろう。我々が超能力と聞いてパッと思い浮かべるのが 炎系の魔法やカマイタチなど戦闘系スキルだが、そんなスキルは平和な国日本ではそんな願望が生まれることはほぼなく、したがって、ほぼ見られないという。かといって中南米などの内戦中の国で常に命の危機に晒されているという環境下では目の当たりにする現実があまりに強烈過ぎて、こんどは浮かんで来た想いを膨らませ育てていく余裕などないためにスキルが育つ事がないそう。
横で聞いていて「私にだって何か能力があるはずだわ。誰か開発してよぉ〜」と地団駄踏んで悔しがっている妻ササ美。そのプロセスを教えろとしつこく食い下がる。アサリによればその方法はとても単純で、心を静めて待っていると、心の奥からぽっと浮かび上がってくる呪文がある。耳を澄ましてその呪文を聞き取ったら、それをとにかく四六時中大声で小声で高い声で低い声で唱えればよい。というもの。それぞれ個人の声帯に応じてもっとも響く音程でもっとも美しい旋律を探す作業。最初は恥ずかしかったけど寮だからあっちでもこっちでも友だちたちが喉を枯らして声を張り上げている中にいると、そのうち気にならなくなり負けじと怒鳴っているうちにコレだ!とイントネーションが閃めいて美しい旋律で唄えるようになるのだそう。