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いつも通りの日常

 月曜日。週明けの学校というのは面倒くさくて仕方がない。授業なんてほとんど聞いていなくても、出席はしないと単位がもらえないし、毎日朝から夕方まで拘束される。

 親に通わせてもらっているので、留年しない最低限は学校生活をしないといけない。

 夜遅くまでゲームをしていたせいもあり、午前中の授業は寝ていたか睡魔と戦いぼーっとしていたが、まだ眠気は取れず昼休みに入っても机に伏せていた。


「今日も飯は食べないのか?」

「食ってるじゃん」


 顔を上げてくわえているパックを見せる。これとジュースも合わせれば500キロカロリー弱にはなるから、ほぼ寝ているだけなら十分なエネルギー摂取だ。

 ぼーっとしながらゆっくりと飲んでいたら、和也はすでに弁当を食べ終わって片付けていた。


「土日はなんかあったのか? いつもよりゲームにインしている時間も短かったし、今日は普段よりは元気そうだし」

「まあいろいろとあったんだよ。金曜から土曜にかけてな。そのせいで、日曜もあまり集中できなくて別のことしてた」


 バトロワ系やFPSは些細なことでミスが増える。少しは触らないと下手になっていくので、数時間はやっていたが少し疲れたくらいのところでやめておいた。


 和也とは高校に入ってから知り合ったが、今では一番話す相手だ。そもそも、実家から離れて一人暮らしをする距離にある学校なので、中学校以前の知り合いがこの学校に来る確率なんてほとんどないわけだが。一応、進学校であり、それなのに校則も緩いので人気はある学校だ。そのため、一人だけ知り合いがこの学校にいる。


「俺よりも早く落ちるなんて、よっぽど衝撃的なことがあったみたいだな。バトロワをソロでやるのはきついから、昨日は整地ばっかしてたぜ」


 和也も結構ゲームをする。とは言っても、俺とは違ってライトゲーマーなので、暇つぶしがてらやる程度だ。

 和也と仲良くなったのも、ゲームのおかげである。俺がPCゲームに詳しいと聞いた和也が、自分のパソコンが欲しいと相談してきたので、やりたいゲームを聞いてパソコンを組んであげたので、それ以来一緒にゲームをしたりして仲良くなった。

 偏見なく、自分のやりたいことをやるのが和也の良いところだ。クラスでも地味な側に分類される俺や他の人とも普通に話をする。一人で引っ張るというわけではないが、全体のバランスも見れるし、互いの仲介役にもなれるクラスの中心人物の一人と言っていいだろう。

 クラスで揉め事もなく、仲良くやっているのは和也のおかげな部分もそれなりにある。


「かずくーん! もうお昼終わったー?」

「終わってるよ。ハルももう終わったの?」

「午前中に体育があったからね。お腹減ってたから、すぐ食べちゃった」


 窓際に位置する俺の机にいるのに、廊下から和也に声をかけながら近づいてきたうるさいやつは、和也の彼女である六角遥香だ。

 ぴょこぴょこと揺れるポニーテールが、落ち着きのなさを現している。


「あれ? ハルトってば、死んでる……?」

「生きてるわ。食事中にうるさいんだよ」

「食事って、そんなの一瞬で飲めるやつじゃん。ちびちび飲んでる悠人が悪い」

「まあ、さっきからくわえているだけで、ほとんど飲んですらいない悠人も悪いな」

「腹減ってねえ」


 飲もうと思えば飲めるのだが、無くなるとなんだか物足りない感じがしてしまうので、ちびちびと飲んでいるのだ。それに、俺以外にもまだ食べている途中の奴はいるのだから、迷惑なことには変わりない。

 六角は和也と一緒にいることが増えたあたりから俺にも絡むようになった。最初に俺の名前を見たときに、"悠人"をハルトと読んで名前似てるねと言ってきて以来、俺のことをハルトと呼んでいる。実際にはユウトなのでその場で否定したわけだが、間違ったことを認めるのが嫌なのか、そのまま定着させやがった。


「で、何しにきたの? 騒ぐだけならどっか別の所でどうぞ」

「かずくん、ハルトがいじめるー」

「悠人は捻くれてるだけだから大丈夫だよ。本当に嫌なら自分がどこかに行くし、裏返せば用があるならいてもいいって言ってるし」

「なら、かずくんと会いたかったから来たの!」

「はいはい。うるさいからもうちょっと声のボリュームを下げてくれ」


 耳元で叫ばなくたって、その前の和也との会話も聞こえてるのだから同じ大きさで話してくれればいい。


「あー……でも、今は椿ちゃん待たせてるから、また後で来るね」


 廊下に視線を向けると、ノートの束を持った香坂と目が合った。すぐに視線は逸らされ、話しかけてきた女子の方を向いて話をし始めたが、俺のことを見ていただろう。

 本当にこれで食事を済ませているのだと呆れていたのかもしれないが、顔が見えたのは一瞬だったので、どう思って見ていたのかはわからない。


「どうしたの? 椿ちゃんに用でもあるの?」

「別に何もない。珍しい奴と一緒にいるんだなと思っただけだ」

「今日日直だったから職員室までノート持ってこいって言われてねー。椿ちゃんも職員室に用があるから手伝ってくれたの」


 面倒くさいとか嫌だとか言っている六角を見兼ねて手伝うと言ったのだろうな。六角なら頼まれたときにとりあえず嫌だとか言ってごねそうだし。


「お前が頼まれたノートをいつまでも持たせていていいのか?」

「ああっ! そうだった! じゃあ、また後でね」

「うん、いってらっしゃい」

「うっさいから、もう来るな」


 パタパタと駆け足で、廊下で待つ香坂のもとへと六角が戻っていく。もう少し落ち着きをあいつに与えてほしい。悪い奴じゃないが、一緒にいると疲れるんだよな。 

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