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実家

 いつもより動きがかくついて見える。ほとんど同時に通路に顔を出したはずなのに、俺の体力が先になくなった。同時に撃ち合えばアーマー差で勝てるはずだったのに、動き出すまでは良かったが狙いを合わせるのが遅かった。

 細かな部分で環境の違いがプレイに影響を及ぼす。とは言っても、それに対応したり、その環境だからこそ立ち回りを変えたりとできるのが上手い人なわけで。それもできずに負けているようでは、まだまだなんだなと実感する。


 実家の一室。高校に通うために一人暮らしを始めるまでは、唯一の俺のための部屋だったわけだが、今もなお俺の部屋として残されていて、掃除のために母さんが動かした物以外はそのまま残っている。

 父さんのお古のパソコンは、今も現役として使うことはできるが、負荷の重いゲームをするにはスペックが足りない。場面によっては目に見えて処理が遅くなっているので、動きの激しいゲームをやるのはきつかった。


「はあ……もうなくなったのか」


 コップに手を伸ばせば、中身はすでになくなっていて、そういえば飲みきったのだったと思い出した。隣を見れば、俺の部屋なのに当たり前かのようにいる鈴音がスマホから顔を上げて俺の方を見る。


「私は入れに行かないよ」

「別に何も言っていないだろ」


 冷蔵庫まで歩くのも気分転換になる。だが、実家の場合は冷蔵庫に行くためにリビングを通ると父さんに捕まる可能性があるのが難点だ。

 実家にいた時はパソコンゲームを今ほどやっていたわけではない。どちらかと言えば、RPGのRTAのチャートをなぞってみたり、自分で改良してみたりして遊んでいた方が多かった。コンシューマーゲームで遊ぶのならば、パソコンのスペックなんてどうでも良かったので父さんのお古をもらって使っていたわけだが、今となってはRTAもやる気が出ないのでやることがなくて後悔している。


 隣でノートパソコンで攻略サイトを見ながらソシャゲのクエストをやっている鈴音から、ノートパソコンを借りればゲームもできるわけだが、まあ嫌がられるだろう。

 それにパソコン自体がどうにかなっても、マウスやキーボードもしょぼいのしかないし。


「やることないから暇だな」

「休みなんだから暇くらいでちょうどいいんだよ。どうせ向こうにいるときはずっとゲームしてるんだし」

「そういって昨日も何もしなかったんだよな」


 そうは言っても、無理になにかをする気にもなれないので、パソコンをスリープ状態にしてベッドに寝転ぶ。スマホを適当にいじりながらゴロゴロとしていると、ふいに背中に何かがぶつかった。


「なにしてるんだよ」

「私も暇なんだもん。たまにはいいでしょ」


 別にダメとは言っていないが、シングルベッドなので二人並ぶには若干狭い。まだ実家にいた中学の頃はよくこうやって一緒に寝転んでテレビを見たり、そのまま二人で寝たりすることもあったな。

 くるっと鈴音の方を向くように体勢を変えると、俺の胸に背中を当てるように腕の中に入ってくる。基本的に学校以外では鈴音は俺にべったりだったので、彰と遊ぶ時もついて来ていつのまにか彰とも仲良くなっていた。

 中学に入ったあたりから、外ではそんなに寄ってこなくなったので、兄離れかなと思った時期もあったが家では変わらずだった。

 俺が高校で一人暮らしを始めてからは、長期休暇に会いに来ることはあっても、普段はあまり連絡もしてこなかったが、こうやって甘えてくるあたり鈴音も変わらないな。


 鈴音が録画したテレビ番組を見ながらゆっくりとする。家に帰ってくる時の車でも寝て、昨日も昼寝をしたのに、ぼーっとしていると気がついたら瞼が閉じていた。

 いつのまにか流されていた録画番組は終わり、ノートパソコンのディスプレイは暗くなっている。スマホで時間を見るともう十八時になっていて、三時間くらいは寝てしまっていたようだ。

 鈴音は丸くなって寝ているので、起こさないようにそっと腕を引き抜いてベッドからおりる。部屋を出て飲み物を取りに行くと、リビングではなぜか彰と父さんが将棋をしていた。


「きてたのか」

「暇だったからね。遊びに来たら二人が寝てたから克人かつとさんと賭けをしてたんだ」

「別に起こせば良かったのに。賭けって将棋でか。どうせ負けるのに、よく父さんも勝負を受けるよな」

「ぐっ……いつもは勝っているんだぞ」


 彰が勝負を挑んでくるということは、それだけの自信があるということだ。今まで勝てていたのは彰が本気でやるのではなく付き合いでやっていたからであって、本気で勝ちにきた彰に対して勝てるとは思わない方がいい。


「で、なにを賭けたんだ?」

「ひみつ。まあ、数ヶ月もしたらわかるよ」


 王手飛車取り。すっぽりと空いた中央あたりに置かれた彰の角がほとんど勝敗を決めた。まだすぐに詰みではないが、彰がミスをしない限りよっぽど上手くかわせないと勝ちはないだろう。

 彰も無理なお願いはしていないだろうが、この二人の賭けはとんでもないものを賭けていることがある。俺が高校で一人暮らしをすることも、二人の賭けで許可されたし。まあ、元より頼み込めば許可してくれただろうが。

 今回も変なことを頼んでなければ良いのだが、数ヶ月したらわかるってことは俺にも関係のあることなのだろう。

登場人物の名前の読み方がわからないと言われたので、自分の振り返りもかねて


メインと準メイン

倉橋(くらはし) 悠人(ゆうと)

・香坂 椿 (こうさか つばき)

紫峰院(しほういん) (あきら)

倉橋(くらはし) 鈴音(すずね)

早川(はやかわ) 和也(かずや)

六角(ろっかく) 遥香(はるか)


サブ

香坂(こうさか) 橙子(とうこ)

杏花(きょうか) 苗字はまだでていないはず

倉橋(くらはし) 克人(かつと)

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