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来るものは

 冬休み。二週間と少ししかない短い長期休暇。さらに、その短い間にクリスマスや年末年始とイベント毎が多くて忙しい。そのくせに課題は出ているという、休ませる気が感じられない休みだ。


「はー……だりい」

「どうせ課題をやる気はないのだから、ゆっくりできるでしょう?」

「やらなくても、あるということがストレスだ。どうせ学校が始まったら、早く出せって先生がうるさいし」

「それならやればいいじゃないですか。ちょっと頑張れば一日でほとんど終わりますよ」


 休み明け直前でもないのに頑張れるだけのやる気があれば、最初から困りはしない。余裕を持つために先に頑張れるのも、こつこつとやり続けられるのも、それはそれである意味才能だと思う。形となってすぐにわかる見返りがないとやる気になんてなれない。

 隣にいる香坂は英語のプリントを進めている。数学と現国、化学の課題はすでに終わったらしいので、たった数日でかなり進んでいる。残っているのは、今やっている英語と現社に選択科目の書道ででている書き初めだけだ。書き初めは真面目に年明けにやりそうだから、明日にはそれ以外が終わってそうだな。


「そ、そういえば、進路希望はどうするのですか?」

「あー、そんなのもあったな。どうせ親に相談しても好きなようにしろって言われるだけだしな。歴史とか覚えるのは面倒だから理系だろうな」

「そんなに適当でいいのですか?」

「どうせ授業なんてほとんど聞いてないから、必要なら自分で勉強すればいいし」


 別に良い大学に行ったって、選択肢が広がりやすいだけで将来楽になるかって言われたら必ずしもそうではないし。どこに行くかよりも、何をするかが大切で、その機会が多いか少ないかの差でしかない。

 別に今は将来やりたいこともないから、何か見つかってから考えればいいだろう。


「そういや、年末年始は帰るのか?」

「27から帰ろうと思ってます」

「俺は26か27から帰るから、26はパソコン使えないと思う」

「しばらくゲームはできないですね。最近は毎日していたので、なんだか寂しいです」

「一ヶ月くらい続けてたからな。まあ、たまには休むのも必要だし」


 そんなに本気でやっているわけではないから、息抜きってほどでもないとは思うけれど。

 それよりも、年明けてこっちに戻ってきた後にこれまで通り一緒にゲームしたりできるのかってところが気になる。しばらく会わないと、自然とこうやって俺の家に来るというのが難しくなるかもしれない。

 それはそれでいいのだが、せっかく買ったパソコンがもったいないなとは思う。香坂のパソコンをとりあえず香坂の部屋に持っていってもいいかもしれない。


「年明けてからこっちにいつ戻ってくるかわからないから、パソコンを部屋に持っていくか?」

「またこっちに持ってくるのも大変なのでこのままで良いですよ。自分の部屋にあると気になって、他のことに集中できなくなるかもしれませんので」


 暇を潰そうと思ったら、パソコンがあればいくらでも潰せてしまうからな。やることがあっても、いったんパソコンを触り始めてしまうと、ついつい時間が経ってしまうなんてことはよくある。ノートパソコンは家にあるらしいが、ノートパソコンと違ってデスクトップパソコンは簡単に動かして使うことができないから、パソコンに向かって座ってしまった時の魔力がデスクトップパソコンの方が上だと俺は思う。


「それに家でゲームをしていると、そのまま寝てしまったりしそうなので、ここでしている方が良さそうです」

「ここに置いておく方がいいなら俺は構わないけど」

「では、このままでお願いします」


 流されてしまっている気はするが、俺も迷惑だとは思っていないからいいか。

 香坂とゲームをすると、前までより早い時間からゲームをすることが多い。その分、終わるのも少し早くなって、体調的にも前より良い気がする。食事の影響ってのも大きいだろうけれど。


 息抜きがてら冷蔵後に飲み物を取りに行こうと立ち上がったところで、机の上に置いていたスマホが鳴り出す。和也も六角も俺がゲームにログインしている時はパソコンの方で連絡してくるから、このタイミングでかかってくるということはあの二人ではない。

 そうなると、面倒な予感しかしない。スマホの画面に表示されているのは彰の名前。これは完全に面倒なパターンだろう。


「はい? 用がないなら切るけど」

「用があるからかけてるんでしょ。今大丈夫?」

「あー……大丈夫かな。内容による」


 香坂ならこのまま家に残して少し出るくらいは問題ないだろう。帰るなら鍵をかけて下のポストにでも入れておいてもらえばいいし。


「荷物があるから取りに来て欲しいんだけど。今日中じゃないとダメなやつ」

「持って帰れる量か?」

「袋一つだから大丈夫。重くもないし」

「それくらいなら取りに行く。三十分もかからないと思う」

「はーい。じゃあ家で待ってるね」


 荷物ってなんだろうか。今日中じゃないとダメってことは食べ物とかか?でも、すぐ傷むようなものを親が送ってくるわけはないだろうし、他に送ってくる人に心当たりもない。


「ちょっと彰に呼ばれたから行ってくるけど、このままここにいるか?」

「すぐ戻ってくるのなら、家に戻ってもやることはないので待ってますが」

「遅くても一時間はかからないと思う」

「それならここにいますね。何かあって遅くなるようなら連絡ください」

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