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二学期も終わるころ

 テストも終わり、冬休みまでの残りの期間は、テストの返却と休み中の課題や補修の連絡くらいで授業が終わっていく。

 暖房のきいた教室の中はドアや窓が閉め切られていれば暖かい。机に突っ伏しながらうとうととしていると、いつの間にかHRは終わっていたようで、教室から出て行くクラスメイトと引き換えに、冷たい風が入ってきて目が覚めた。


「騒がしいな……」

「テストの順位の張り出しだよー」

「張り出しって、いつものように十位までだろ? ほとんどの奴は関係ないだろ。俺も載るはずがないから見に行く気にもならないし」

「友達が入ってるとか、ただ見たいだけって人もいるから、張り出されてる一階の廊下はすごい人だよ」


 十位なんてまず無理だ。さすが一応進学校なだけあって、十位以内に入る奴は平均で90点は超えてくる。一学年約百八十人の中の上位十人なので、ちょっとやそっとの努力で入れるものじゃない。

 十位までの生徒以外にも平均点と五十位と百位の点数も張り出されているので、それでだいたいの自分の位置はわかる。平均点とかは、俺は寝ていたから聞いていないが、HRでも発表されているはずなので、見に行く必要はないが。


「今回も一位は紫峰院くんみたいだねー」

「入試からずっと一位キープかあ。文武両道で敵無しって感じだね」


 誰かに写真でも送ってもらったのだろう。六角がスマホを取り出して画面を見せてくれる。

 一位は満点で彰。結果は見なくてもわかっていたが、こうやって本当に全て満点なのだと見せられると、さすがだなと改めて思う。


「悠人は中学も彰と一緒だったんだろ? 前からずっとあんな感じなのか?」

「小学校の頃からテストは満点か書き損じで減点くらいしか見たことがないな」

「やっぱり、できる奴は違うなあ。満点取ればお小遣い倍だって言われても俺には無理だわ」

「それは和也の意思が弱いだけだろ。彰は外ではあまり見せないけれど、それだけの努力をしてきているからな。英才教育と本人の努力が噛み合った結果だ」


 俺たちがテスト前に頑張ったって言って一日五時間勉強したとすれば、彰はいつものことだからと軽い感じで言いながら一日五時間以上勉強しているのだ。そりゃ簡単に並べるわけがない。

 今はそこまでやっているわけではないが、跡取り候補として期待されていた小学校卒業くらいまでは、ぎっしりと詰め込まれていたらしい。


「なんかあまり彰と関わりたくないような雰囲気をしていたわりには、仲よさそうだな」

「一緒にいると面倒なことが起きやすいだけで、悪い奴ではないからな。それに、彰が付きまとってくるから無視できないし」

「悠人は一緒にいると落ち着くからかな? 自然でいられる気がする」


 それは褒められているということで良いのだろうか。単に俺がだらだらとしているから気を使わなくて良いとかそんなことではないと信じたい。


「あとはー、九位に椿ちゃん入ってるね!」

「さすがだね。前回は十位だったっけ?」

「そうだよー。うーん……夜に電話とかしてたのになー。なんで私は低くて椿ちゃんは」

「お前がそれ以外の時間もほとんど勉強してないからだろ」

「ハルトには言われたくない! と言っても、ハルトにも勝てないんだよねー……」


 がっくり、と口で言いながら膝をついて俺の机に頭を乗せる。和也が六角の頭をポンポンと優しく撫でるように触ると、復活して立ち上がった。


 香坂は前より順位が上がったのか。ちょっとほっとした。これで下がっていたなら、ゲームをやるようになったのが原因だとなるかもしれなかった。流されてだとしても教えた身としては、ゲームをしなければ良かったと思われるのは嫌だ。

 ゲームをしていたと言っても毎日二時間もしていなかったし、終わった後はしっかり勉強をしていたから、結局はちゃんと時間の配分を考えてやるというのが大事なんだろう。


「かずくんもハルトも五十位以内でしょ。私だけ点数低い……」

「一夜漬けで補習免れただけでも良かったと思えよ」


 授業も真面目に受けずに一夜漬けだけで補習もなかったのだから上々だろ。良い点数が取りたいなら、相応の努力はしないと。


「俺も悠人に負けたのはショックだ」

「平均点で二点差なら誤差だろ」

「今回は頑張ったんだけどね」


 俺も香坂が隣で勉強をしているから、ゲームをしながらの勉強とは言えども、いつもよりはゲームに集中して勉強の方に全く手が伸びないなんてことが少なかった。ながらでも勉強していると言った手前、ちゃんとやっていないと何か言われそうな気がしてさぼれなかったというのが正しいか。

 前回と比べて、平均点で五点くらい上がっていたので、それだけ長い時間勉強していたのだろう。これまでも杏花さんの作ってくれる資料のおかげで、学年平均は超えていたが、全てに目を通すのがきつくて捨てていた部分も多かったから、今までは完全に時間が足りなかったのだろう。


 彰と会って遊ばなくなったから、杏花さんにも夏以来会っていなかった。年末年始で実家に帰るときには会うだろうから、またお礼でも言っておかないとな。

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