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たまには頑張るやつとギリギリまでサボるやつ

 テストまで一週間を切れば、自然とテストの話題が多くなる。部活動もテスト期間ということでテストが終わるまでは休みになることも大きいだろう。うちの学校は全国常連のような強い部活動も無いので、テスト前まで特別に練習をするとかもない。

 普段七限まで授業があったりすることもあるからか、テスト前は短縮授業で時間数も少なかったりするが、まだ一週間前なので遊びに行く予定を立てる奴もそこそこいる。早く学校が終わる分、遊びに行っても帰ってから勉強をする時間は十分にある。口では勉強しないといけないなんて言っても、誘われれば断る奴はほとんどいない。

 教室に残っている人数も少なくなってきたのに、提出物を出さなかっただけで代わりの課題を出されたので、和也と話しながらだらだらと進めている。課題をやるだけで提出予定だった問題集をやらなくて済むのは、プラスなのかマイナスなのか難しいところだが、一時間もかからずに終わりそうなので良かったと取るべきだろう。


「そこ計算間違ってるぞ」

「ここ? 本当だ。足し算ミスってる。ありがとう」

「ほとんど問題集と同じ問題だから、問題数が少ない分楽そうだな。昨日の夜の俺の頑張りを返してくれ」

「成績で返ってくるだろ」

「それも微妙なところだしなあ。中学までと違ってテストの点が評価の大半を占めるし」


 たしかに中学までは授業態度とかの欄が悪いと成績下げられたが、高校に入ってからは授業態度とかは加点要素程度でテストの点さえ取ってたら成績もそれなりにもらえている。学校によっても変わってくるだろうけれど、ここは結果が良ければって感じだな。その分、点数が悪いと補修や再テストが待っているわけだが。


「ハルト~。まだやってるのー?」

「……うっさいのが来た」

「はは。だらだらとやってるからだよ」


 六角も俺と同じく課題を出されていたはずだが、もう終わらせてきたようだ。ゆっくりやっていたとはいえ、俺はまだ半分を少し超えたところなので、同じ問題だとすればかなり早い。


「手こずっていますね。大丈夫ですか?」

「え!? ……なんでいる?」

「私の課題手伝ってもらってたの。考えてたら遅くなっちゃうし」

「自力でやれ。自力で」

「ちゃんと話すのは初めてだね。香坂さん」

「お話はよく伺っています」


 少し前までは教室に残っていたクラスメイトは、今はもう一人しか残っていない。残っているのは俺も話したことのない物静かな女子だけだったので、ほっと肩の力を抜く。

 問題数はそれほど多くないし、内容も皆がやってきた問題集レベルなので放課後だけで終わらせることはできる。だが、急いでも三十分くらいはかかってしまうし、数学が苦手で俺よりも成績の悪い六角ならもっと時間がかかる可能性があるのは仕方がない。だからと言って、人に頼っても良いことにはならないが。

 まるで互いの保護者かのように挨拶をした後に、俺と六角が世話になっているだの話し出す和也と香坂は放っておくことにする。触れたら面倒なことになりそうだし。


「もう提出してきたのか?」

「ううん。あんまり早く出したら手伝ってもらったことバレそうだし」

「自覚があるならちょっとは自分でやれよ」

「面倒だもん。サボれるものはサボらないと」

「サボった結果がこれで、さらにサボったらテストでつけがくるぞ」

「かずくんに教えてもらうから大丈夫!」


 俺もやる気は出ないが、ここでやっておけばテスト勉強になるから一応自力でやる。どうせ帰ってからやるならこのタイミングでやっても変わりないだろうし、答えを書くだけの時間がもったいない。


 俺の机の周りで話す三人は無視しながら、教科書と和也のノートを見て公式を探す。ペラペラと教科書を捲っていると、手が伸びてきて止められた。


「その問題ならこの辺りに載ってますよ」

「ありがとう」

「あー! ハルトも教えてもらってるじゃん。いけないんだー」


 和也と話していたくせにこういうところは見逃さないのか。ニヤニヤと獲物を見つけたと言わんばかりにこちらに寄って来る。


「公式を探すのくらい助けてもらっても良いだろ。やり方はわかってるんだから」

「本当にわかってたのー?  ずるしてない?」

「わかってないのに探すかよ。さっさと帰るか、人の邪魔はせずに和也と話でもしとけ」

「ぶーぶー、対応が冷たいなー。暇だから飲み物でも買いに行こうっと」


 暇ならば帰れば良いのにと言ってしまえば、またいろいろと言われそうなので黙っておく。

 和也と香坂を誘って自販機までジュースを買いに行ったので、途端に教室の中が静かになる。さっきの問題を解いて残り五問にまで進んだので、一度立ち上がって伸びをする。戻ってきたらどうせうるさいだろうから、あいつらが戻ってくるまでに終わらせたい。


 集中してペースを上げて問題を解けば三問はすぐに終わったが、そこから若干詰まり悩みながら一問解いたところで間に合わず三人が戻ってきた。


「終わったー?」

「あと一問」

「まだ終わってないの? 早くしてよねー」

「やってるだろ。もうちょっと待て」


 やっているとは言ったが、最後の一問だけ難しい問題なのか全然解けない。最後が難しいのを知っていた六角が楽しそうに俺のことを見ているのが気に食わない。教えてもらって自力で解いたわけじゃないのに。


「それ引っかけだから、二個に分けて考えるんだって」

「ああ、そういうことか」

「はい、ハルトも教えてもらったー」

「勝手に教えてきたんだろうが。頼んじゃいない」


 おかげで最後の問題が解けたことには間違いないが、別に教えてくれとは頼んでいないから同罪ではない。それに、全部教えてもらってやったのと、最後の一問でヒントだけもらったのを同じにされるのは癪だ。まあ、結果はテストの時に点数で出るだろう。その時に言い返せば良い。


「よし、終わった」

「お疲れ様」

「よし、さっさと提出して帰ろー」


 職員室まで課題を出しに行けば、普段提出物をまじめにださない俺と六角が、その日のうちに終わらせて持ってきたことに驚かれる。提出の期限は明日の授業前だったので、他の課題を出された奴らは帰ってからやることにしたのだろう。帰ってからまじめにやれるのなら、そもそも元の提出物を出していただろうから、明日も忘れたと言いそうだけど。


 職員室から出て、待っていた和也と香坂と一緒に帰る。三人が普通に話しながら帰ることに違和感を覚えながらも、楽しそうに話しているので深くは考えず、和也の後ろを歩く。

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