表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/33

デー……二人で買い物に 2

 がやがやとうるさいフードコート。土曜日ということもあって子供連れの家族の姿が多いのもあってうるさいのだろう。少し遅めとはいってもまだ一時半くらいなので席はほとんど埋まっている。

 店舗の一覧が載ったボードを見ていた香坂が顔を上げて、店の位置を確認し始めた。


「フードコートで良かったのか?」

「はい。たまにはこういうところも良いかなと」

「じゃあ行くか。うどんで良かったか?」

「え、ええ。よくわかりましたね」

「見てればわかる」


 ボードで一番見ていたところだし、探していた視線の先にはうどん屋しかない。二人じゃなくて三人以上で来ていたなら話は別だが、二人できているのだから相手の様子くらい見ている。

 それぞれ注文してお会計を済ませる。外食はあまりしないと言っていたので心配したが、普通にお会計まで済ませていたので一人では外食はしないというだけでほとんど経験がないということではなさそうだ。


 この一週間は香坂に夕飯をもらっていたわけだが、いつもは香坂はすでに自分の家で食べてから俺にもってきてくれているので、こうやって一緒に食べるのは一週間ぶりなわけだ。先週は橙子さんがいろいろ話していたので気にすることはなかったが、二人で面と向かって食べていると気になる。

 店内は空調が効いているのでコートを脱いでいる香坂は、フリルのついた白いブラウスに汁が飛ばないように気をつけながらうどんを食べている。ゆっくりとうどんを口に運んでいるが、気をつけながら食べるのって大変そうだな。


「どうかしましたか?」

「いや、食べにくそうだなって」

「慣れてますから。むしろ勢いよくすするほうが難しいですね」

「ふーん。俺には無理だな」


 そういえば、俺の妹もうどんも含めて麺類をすするのは苦手だったな。周りに飛び散らかしたり、わざとらしく音をたてたりとかしなければ、食べ方なんてなんでも良いだろう。


「でも、その格好ならもう少しおしとやかにしていた方が似合いますよ」

「ぶっ! ……それは言うな」

「ふふふ。女性らしい動きの練習でもしてみますか?」

「絶対に嫌だ。サイズや見た目的に女物の方が良いから着るってのは許せても、女装するつもりはない」

「そういうことにしておきます」


 ぐっ……否定しても、今がこんな格好だから説得力がなさすぎる。引かれているわけでもなく、楽しそうに笑っているので本気で言っているわけでもないだろうから、もう話を変えよう。


「うどん好きなのか?」

「好きってほどでもないですけど、外で食べるならうどんを選ぶことが多いですね。うどんは家で作ろうとすると、スーパーで売っている麺だと物足りないですし、麺を自分で打つのは大変なのでお店で食べることが多いですね」

「あーわかる。なんか別の食べ物って感じだもんな。カップ麺とかのうどんも美味しいけど、麺の感じが全然違うし」


 店によっても違うから、朝昼晩とうどんとかになっても数日くらいなら問題ない。麺類はそれ単品で食事になるから安上がりだし良い。すぐに食べないと面が伸びるから食べるタイミングは選ぶが。


 食べ終わった食器を片付けて休憩がてらそのまま今日の目的の話をする。ここに来る前にさらっとパソコンのパーツは見てきたので、後は実際にどれを選ぶか決めるだけだ。


「ちょうどCPUとマザーボードのセット割がやってて良かったな。ネットで単品で買うより少し安くなりそうだ」

「良いタイミングで良かったです。見ていたのってこれでしたよね?」

「そうそう。セット割で二千円安くなるから、ポイントも使えばCPUクーラーも光るやつ買えそうだけどどうする?」

「後から買い足せるなら今はやめておきます」

「じゃあ、メモリをちょっと良いのにするか」


 もらってきたセールのチラシと撮らせてもらった写真を見ながら話を進める。ここまで来たら買うしかないので買うものはどんどん決まっていくが、見ていると欲しくなってくるもので自分の買いたいという衝動は必死に抑える。一応、もしもの時のために俺も金は持ってきているが、必要でないものを買っても仕方がない。一時の気の迷いで散財していては、一人暮らしを親に止められそうだから我慢しなければ。


「全部買ったら四万千円か。ケース代を含めても予定の範囲内ではあるけど、これで良いか?」

「はい! これにします。さっそく買いに行きましょう!」

「はいはい。わかったから落ち着こうな」


 視線を下に落とせば、しっかりと香坂の手が俺の手を握っている。俺よりは体温が低いのかわずかにひんやりと感じる柔らかい手の感触を意識すると、じわっと手に汗をかいたような気がしてきた。

 俺の視線が下に移ったことに気づいた香坂が、握った手を見て冷静になり、慌てて手を放す。


「す、すいません。舞い上がってしまって」

「別に悪いことじゃないから気にしなくていい。楽しんでくれているならパソコンのこととか教えて良かったよ」


 いつも楽しそうにはしているが、こうやって無意識に行動してしまうほどテンションが上がっている姿は見たことがなかった。自分でも驚いて顔を少し赤く染め恥ずかしそうな表情を浮かべる香坂に、いつもより近い存在であるような気がして、もう一度触れようと手を伸ばしそうになった。


「逃げはしないけど、せっかく楽しみにしているんだからさっさと行くか」

「はい。行きましょう! 目指すは今日中にパソコンの完成です」


 急いだところでケースが届くまではまだ時間があるし、セットアップ含めても教えながらなら二時間もかからないだろうが、無粋なことは言わずに元気よく歩き出した香坂についていく。

昨日PCショップ見に行ったんですけど、3~40分堪能して、結局何も買わずに帰りました。見てるだけでも楽しい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ