小悪魔は、かなりの割合で悪魔寄りでした。なのに…
『よりによって、アイツらに気づかれるなんて、ね…』
アモーネが少しイラついてるように見える。
『【天使】共が干渉している間は、我々にもなかなか文香様は見つけられないのです…もう暫しお待ち下されば探せるかと』
アスタルは落ち着きを取り戻したようで、何やら探っているように虚空を見つめている。
「【天使】って、やっぱ神様の御使い的なヤツ?羽があって、頭に輪っかとか」
あたしの質問に答えたのはアモーネで、
『まあ、そんなとこね…元々は同じ種族といえるから力はほぼ互角なのよ』
という事は…今【天使】は文香を【悪魔】から奪お…救おうとしていると言ったところなんだろうか…?
『こうなったら、少し"設定"を変更する必要があるみたいね』
アモーネのこの言葉にアスタルが頷く。
『契約保持の為には、危機的状況に於ける契約者の保護が必要ですね』
なるほど、それ程に【天使】は手強い商売敵なわけか…
「ところで、さ…」
ふたりの悪魔があたしの方を向く。
「文香…見つかった?」
アスタルが頷いて、
『はい。どうやら、文香様は今こちらに向かわれておられるようです。』
もう【天使】はいなくなったのかな?そんな事を考えてたら、文香が帰ってきたようだ。
「ただいま〜」
いつも通りの声。そして、いつも通りに文香がひょこっと顔を見せた。
「あれ?アスタル…そう、そっちのが━━」
ツカツカとアモーネに近づく文香。そして…
「アンタねぇ!ひとのお姉ちゃんにくだらない事吹き込んでんじゃないわよッ」
アモーネのシャツの襟を掴んでぐいぐい揺らす。
『ちょっと、やめなさいって!?……』
尚もぐらぐらさせる文香…
『やめろ、小娘━━この場で殺すぞ』
アモーネの顔つきと口調が変わった…慌てて文香を引き剥がす。
「落ち着きなさい…今のは半分以上本気だから…」
『やぁーねー、ちょっと脅かしただ、け、よ♡てへっ』
アモーネはもういつもの調子に戻っている…文香も落ち着いたみたい。
『それはそうと、文香様』
アスタルがふたりの間に入り込みながら文香に話しかける。
『あの忌々しい【天使】達とどのようなお話を?』
文香がちょっと不満そうな顔を見せた。
「それがね、アイツらひどいのよ!お姉ちゃんを元に戻すとか言い始めたの」
━━それひどくねーから!大事だし必要だから!
「そしたら契約が消滅するから魂は神様のところに行けるとか何とか…」
ふたりの悪魔の顔に緊張が走る…どうやらそれは真実みたい…
「だからね、言ってやったのよ!」
━━【天使】に、何を…?
「おととい来やがれバカ!!って…」
『ぶはあぁぁっ!!』
アモーネが盛大に吹き出した。
『何それ、最高ぉ〜!!妹ちゃんてば、やるじゃない〜』
アスタルも品良くだが、声を微かに出して笑っている。
『お見事です…さすが文香様…賢明なご判断でございます』
━━いやいやそれ、乗っかっていい話だから!
「あんなヤツらにお姉ちゃん取られたくないもん!」
その一言で我に返ったあたし。
━━今だ!
「文香…」
涙目であたしを見てる文香をくいっ、と引き寄せて…
頭を軽く撫で回す。
「あっ、お姉ちゃ…」
そして、そこから音速を超えた動きで…!
━━チュッ♡
文香の唇に自分の唇を重ねる…
(うわぁ、ホントにしちゃったよ…)
びっくりして目を丸くする文香…ゴメンね…
━━そして、あたしは姿を消して。
━━【僕】が姿を現した…
「何!?何なのよそれえぇぇー!?」
文香の絶叫が高らかに響き渡ったーー
どういう訳か、書いている内に自分でも思わぬ感じに話が狂ってきています…でも、その方が面白そうだからこのまま流れに乗ってみましょう、うん。