表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/58

愛瑠の過去━━【悪魔】に惚れた【天使】

気だるげな午後のお茶のひと時・・・何故かあたしと愛瑠しか居なかった。

『珍しいですね、こんなのは・・・』

愛瑠が紅茶を口に運びながら言う。アモーネとアスタルは職員会議とやらで学校、瘉と文香は出かけていて居ない。

「そだねー。ところでさ・・・」

あたしは、どうしても気になっていた事を聞き出そうと思った。

「愛瑠ってさ、どうして【悪魔(てんてき)】のアモーネに惚れちゃったの?」

そう、普通なら有り得ない。一体、何があったんだろう?

『まあ、話すと少し長くなるかも知れませんけど・・・』

愛瑠は躊躇いがちに聞かせてくれた━━


━━あれは、前に起こった"聖魔大戦"の時でした・・・

私も瘉も、勿論【天界】の側にたって戦っていたんです。多くの【天使(なかま)】達が倒れ、瘉とは離れ離れになり・・・回復魔法が使えるとはいえ、魔力も少なく、傷ついた私は瓦礫の陰に隠れて魔力の回復を待っていました・・・

その時に、運悪く上級【悪魔】達に見つかってしまったんです。

直ぐに私は陰から引きずり出され、もう助からないと覚悟を決めて最期の闘いをしようと立ち上がりました・・・その時、その中にいたひとりの【悪魔】が私を見ながらこう言ったんです━━

『この程度の【天使(ヤツ)】に構ってる暇なんて無いわよ〜、アタシが片付けておくからアンタ達は向こうの強敵(おもしろ)そうな【天使(ヤツ)()を蹴散らしてちょうだいよ』

他の【悪魔】達はその言葉に従って飛んで行きました。そしてその【悪魔】は私に向かって・・・

『アンタもアタシ達も、ホントはこんなくだらない事したくは無いわよね・・・』

そう言って、私に魔力を分けてくれたんです・・・

『とりあえず、生き延びなさい・・・アンタの名前は聞かないでおくし、アタシも名乗らないでおくわね?聞いてしまったら、戦わなきゃならないかもだから』

私は、【悪魔】は皆、血に飢えた殺戮を好む種族だと思ってましたから、驚きました。こんな【悪魔(ひと)】がいるなんて━━

『どうして、助けてくれるんですか・・・?』

私が聞くと、その【悪魔(ひと)】は笑ってこう言ったんです。

『そうね・・・アンタが可愛かったから、かしら?アタシはこの"聖魔大戦(バカさわぎ)"が気に入らないのよ。こんな事で可愛いと思える存在(モノ)が失くなるなんてつまらないじゃない?』

━━そんな、だって・・・恐らくはかなり上級の【悪魔】が、この大戦(たたかい)を気に入らないとか言うなんて・・・

『あの、それでいいんですか・・・?この事が分かれば、あなたの身にも危険が及ぶかも知れないのに・・・』

『あら?【悪魔(ひと)】の心配なんかする余裕無いでしょ?アタシは大丈夫よ、かなり偉いんだから』

そう言って、大きく羽を拡げて飛び立つと、私に向かって・・・

『イイわね?上手く生き延びなさい・・・そうすればまた何時か逢えるかも?』

そして、そのまま戦場に飛んで行ってしまったんです━━

やがて、【天界】が辛くも勝利した訳ですが、その時に捕まった【悪魔】の中に、その【悪魔(ひと)】が居たんです。

【天界】の出した判断はもちろん"断罪"・・・はい、殺すことです。でも、私は敢えて私を助けてくれたその【悪魔(ひと)】の"断罪"を引き受ける事が出来たんです。まあ、私もかなり【天界】では偉い方だったので・・・

『あら、アンタがアタシの首を落としてくれるのね?痛くしないようにスパッとやってちょうだいね?』

笑ってそう言うその【悪魔(ひと)】に、私は抱きついて泣いていました・・・

『出来ません、そんな事出来ませんから━━!!』

そして私はその【悪魔(ひと)】を人間の姿に変えて地上に送ったんです、誰にも知られずに・・・

その【悪魔(ひと)】こそ、アモーネおねぇ様なんですよ━━

それで、それから私も後を追って【人間界(こちら)】に来たんです・・・


━━そこまで話して、愛瑠はひとすじの涙を流した。

「【天使】よりも慈愛を見せた【悪魔】、ね・・・」

なるほど、それでアモーネに・・・

「だからって、"オトコの娘"になる必要・・・ある?」

それも【天界】の目を誤魔化すため・・・?

『いえ、コレはただの私の趣味です』

そこ、ただの趣味だったんかい!?

「そっかー、それで愛瑠はアモーネが━━」

アモーネの印象が少し変わったかも・・・

『でも、おねぇ様ひどいんですよ!?私がやっと探し当てた時には私の事なんかすっかり忘れてたんですから!!』

何とも、まあ・・・

「それってどのくらい時間かかったの?」

『たった700年ですよ!?そんな程度で忘れるなんて・・・』

は・・・?700年・・・!?

「忘れて当然の時間やんけ!!」

最後のオチまでつける愛瑠の頭を叩いて、あたしはすっかり冷めてしまったカモミールティーを飲み干したのでした・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ