お客様は【天使】様です
学校も終わり、帰宅した訳ですが…
客間のソファに座るあたし『達』。
『これは、どういう事かしら?』
何時になく不機嫌なアモーネさん。その腕にしがみついている愛瑠さん。
その向かいに座るあたし。その腕にしがみついている瘉ちゃん。
少し離れてこちらをジト目で見ている文香と、その後ろに控えているアスタル。
「とりあえず、現状を確認したくてあたしが呼んだんだけどね…」
『アタシは【天使】たちと楽しくお茶する気分にはなれないわよ、まだね』
アモーネはそう言いながらも愛瑠さんを無理に引き剥がそうとはしていない。
あたしもとりあえず、瘉ちゃんをそのままにして、アスタルに声をかける。
「まあ、アモーネはこう言ってるけど、あたしと文香、あと"お客様"にはお茶を貰える?」
にっこり笑ってお願いすると、メガネのメイドさんが素早くお茶の支度をしてくれる。
「ありがとう、今日も完璧なのね」
メイドさんは人数分のお茶を入れ終えると、一礼してスっと下がっていく。
「お姉ちゃん、いつまでそうしてるつもり?」
文香の目が険しくなるけど、お構い無しにあたしの腕にじゃれついている瘉ちゃん…
『あ、ウチの事はお構いなく〜♡』
「私の定位置なのよ!そこはッ!」
ついに限界がきて、あたしの腕を取り合い始めるふたり。
『全く…んで?確認したい現状ってのは何なのよ?』
アモーネも仕方なしといった感じで話を促してくれる。
「うん、先ずはこの【天使】があたし達に対してどんな立ち位置にいるのかを知りたいの」
そう。つまり、あたし達"兄妹"をどうしようとしてるのか、それを確認したかった。
『少なくとも、おねぇ様たちを今すぐにどうこうする気はないんですぅ』
瘉ちゃんが上目遣いで言う。
『そうですね、今は特に"上からの指示"はありませんよ』
愛瑠さんもそれに同調する。
「そっか…それならいいんだけどね」
あたしは帰り道である『計画』を立てていた…実行するなら今しかない。
「あたしとしては、お互いを牽制する為にこの家にふたりも住んでみる、という事を考えてたの」
『真琴様━━!?』
アスタルが珍しく動揺を隠さない。
『アンタ…とんでもない事言い出すわね…』
アモーネも目を丸くして呆れ果てている━━
『えっと、それって━━』
瘉ちゃんが、目をキラキラさせてこっちを見つめる。
文香が、怒り半分、呆れ半分の目で見つめてくる。
『ウチがおねぇ様たちと同じ屋根の下で…』
━━〔真琴様…お気は確かですか!?〕
(あら、アスタルも慌てる事があるんだね〜)
━━〔事が事でございますから…何か狙いでもお有りなのでございますか?〕
(とりあえず【天使】達の暴走、というか、"上からの指示"の実行を抑えられる環境を作りたい、て所かな)
━━〔左様なお考えでございましたか。成程、それも一理ありますね〕
(それに、アモーネを見てると、あながちふたりを嫌がってるようには見えないのよね)
━━〔兄上は特殊ですから…〕
(まあ、それは見れば分かるけど…とりあえず様子見のためにも、ダメ…かな?)
━━〔仕方ないわね…分かったわよ〕
(!アモーネ…じゃあ、お願いね?)
「よし、決まり!愛瑠さん、瘉ちゃん、そういう事で」
『いえ、あの…!?』
『よろしくです、おねぇ様ぁ〜』
━━そして、【悪魔】と【天使】と【ガチ百合】の共同生活が始まったのでした……
まあ、それぞれのシーンを分けて書くよりも皆まとめた方が早い、という事で…はい。




