敵か味方か…神のみぞ知る━━
━━そして、翌日、文香の教室で。
「━━と、いうわけで、今日からこのクラスに編入した…」
『佐伯 癒です。皆さん、よろしくお願いします』
ぺこり。ショートカットの似合う活発そうな美少女が頭を下げた。
「ぉぉお…これまた…じゅるる…」
文香が興奮気味に彼女を見つめていると━━
(文香様、くれぐれもお気をつけ下さい)
アスタルの注意が入る。
(分かってるけど…可愛いね、彼女…ふふふ…)
文香のスイッチが入りかけているところに、
『よろしくね、文香さん』
癒が文香の隣の席に座った。
『全く…薄汚い野良犬が覗いてなければもっと楽しかったのに…』
ブツブツと不満気に呟いてる癒、キョトンとした文香。
(私の事を申しているのですよ、文香様)
『まあ、ウチも無駄なドンパチなんかしたくないから、とりあえずくそワンコの方は目をつぶったげるからね』
いきなり口調が変わって文香に話しかける瘉。
『あ、そうだ…後で文香のアニキ……今は姉御か…会わせてね?』
やはり事情は理解してる様で、
『でもオマケでついてるあのオカマにはあんま逢いたくないんだよねぇ…カブねぇがあんなのに夢中になる訳がホントに分かんない…』
かなり【悪魔】を毛嫌いしてるみたいで。
『でも、勿体ないことしたよねぇ…文香のアニキ、ウチは気に入ってたのになぁ…』
そして、ニヤリと笑って瘉は文香にこう告げた。
『決めた。ウチが文香をコピーしてアニキを男に戻しちゃおう!』
━━(!文香様、速やかにお逃げ下さい!【佐伯瘉】の"能力"は他者を完全に複製して自分に上書き出来るのです!)
アスタルの切迫した声が終わらないうちに。
チュッ♡瘉は文香の頬にキスしていた。
「ちょっと、あんた…」
瘉は、完全に文香と瓜二つの姿になっていた。
『この身体でアニキを元に戻してあげるからね!』
そう言いながら瘉はその場から姿を消した…
「ちょ、瘉!?」
━━(兄上と真琴様には私からお伝えいたします。間に合えばよろしいのですが…)
「頼んだわよ、アスタル…」
お姉ちゃんがあのクソ兄に戻るなんて…そんなの、許さない━━
そんな思いとともに浮かんだもうひとつの思い…
クソ兄の唇は奪わせない━━
(やだ、あたし何考えてんだろ…)
文香の瞳が、不安気に揺れた…
━━時を同じくして━━
「文香の方はどうなったのかな…?」
あたしは文香の心配をしていた。もし、"上からの指示"ってのが文香に対しておりていたら…
━━(その心配はごさまいません。それよりも緊急事態でございます…)
(アスタル!?)
━━(文香様はご無事でございます)
とりあえず良かった…
━━(ですが、真琴様が狙われております)
(ぇぇえええええ!?あたし、殺されちゃうの!?)
━━(いえ、そうではございません)
(どういう事なの?)
━━(【天使】は今、文香様の姿になっております。)
(ほぇ?)
━━(どうやら、【天使】は真琴様を男に戻したい様なのです)
(それって、可能なの?)
━━(はい。姿、いえ、"存在"そのものを変える能力を持つ【天使】なのでございます。則ち)
(文香そのものになっている、て事?)
━━(はい。その状態で"条件"を満たせば…)
(!?…そういう事か)
━━(くれぐれもお気をつけ下さいませ。文香様にはお近づきにならないことを強くお勧め致します)
これからあたしの前に現れる文香はニセモノだって事か…
━━(あら、チャンスじゃない?)
(アモーネ…)
━━(いいじゃない、この際だから戻っちゃいなさいよ♡)
(そっか、そだねー、戻っちゃおう!)
あたしは、偽文香が現れるのを待つ事にした…(0゜・∀・)ワクワクテカテカ
滝のように流れる鼻水のせいで、鼻の下に虹がかかっています(嘘)




