いとも簡単に理解した両親が理解できない
「さて、と」
落ち着きを取り戻した妹とリビングに入り、ソファに座る。
「ところで、この変身を周りにどう説明すればいいのかな?」
僕は今差し迫った問題点に頭を悩ませている。だって、男が女になっちゃったんだよ!?おネエ系からの転換とかじゃない、まるっきりの変化だよ!?
「えっと…先ずはクソ兄…じゃなくて、兄貴を急死させる?とか」
(; ・`ω・´)ナン…ダト!?
「もしもし?文香さん?何言ってるのか良くわかんないけど…」
幾ら兄貴が嫌いでも、いきなり殺すのは無いんじゃね?というより、殺したいほど嫌われてたの!?
「あ、そういう意味じゃなくてさ、男に戻れないならいっそ遠くに行ったとかするよりも誤魔化しが利くかなって」
えぇー…なんか腑に落ちないんですけど…
「それよりも、先に解決しないといけない事があったような…」
そう、それは…
「文香...?そちらの人は誰…?」
そう、両親だよ!他人よりこっちだよ!
「あ、お母さん…あのね、驚かないで欲しいんだけど」
文香が説明するよりも早く━━
「もしかして…誠人…なの?」
「「分かるの!?」」
僕たちの声に、母はにっこり笑ってこう言った。
「だって、誠人のパジャマ着てるじゃない」
それだけでこの異常事態を理解したんですか、あんたは!?
「それにしても…誠人ったら…」
いや、僕のせいじゃ無いからね!?
「性別が変わっちゃうくらい寝相が悪かったなんて…」
「「そんな寝相あるかああぁッ!?」」
━━思い出した。母は天然素材120%な人だった…
「後は…親父か…まあ、そっちは大丈夫、かな?」
幸か不幸か、うちの親父殿はこの手の話に理解がある人だからな…
━━そして、その親父殿が起きてきて誰よりもパニック状態に陥るなどと、誰が予想出来ただろうか…
「━━まさか、そんなオカルトじゃあるまいし…」
「あんたがそれ言うか…」
オカルト研究者の父、最も理解出来そうな人が一番最後まで理解できないとは誰も思わなかった。
文香の話を聞き、僕の姿を見て、やっと事情を理解した様で
「とにかく、"男"の誠人については、海外に留学したとしておこう。」
親父殿は当座の解決策として、それを提案してきた。
「まあ、妥当かな?んで、こっちの方はどうする?」
僕は自分を指さして意見を求める。
「それなら~」
母が手をポンと打ってのんびりとした口調で、
「ノルウェーにいる叔母さんのところにいる従姉がこっちに来て、代わりに誠人が行った、て事にしましょうか〜」
いやいや、ノルウェーにそんな人居ましたかぁ?
「それは本当にいるぞ、誠人。父さんの姉貴がノルウェーに住んでるんだ」
えぇー、そんなの初耳だけどー…
「でも、それが一番自然に誤魔化せるんじゃない?お姉ちゃん」
文香…もう僕は『お姉ちゃん』なんだね…
「幸い、今日が土曜日だから…表面的な手続きは出来るかな」
親父は行動が早い。素早くメモに色々な事を書き始める。
【誠人は従姉と入れ替えにノルウェーに留学する】
【代わりに従姉の】
そこまで書いて、手を止めた。
「ところで、名前はどうする?」
「同じ【マコト】でいいんじゃない?字は変えて」
僕の言葉に親父は頷き、
【真琴】と書いた。
「これでいいか?」
「ま、いいよね」
こうして、あっさりと【誠人】は居なくなり、代わりに【真琴】が誕生したのでした…
「あ、それとお姉ちゃん!」
文香が僕にビシッと指を突きつけて言った。
「女の子なんだから、『僕』はやめてよね!」
「えぇー…でも、仕方ないか…」
そして、僕…あたしの憂鬱混じりの毎日が始まるのです…
お母様、何か最強です(笑)作者的にはこのお母様がお気に入りなのはまだ内緒にしておきますシ━━━ッd(ºεº;)




