戻ってきた『僕』に、今を楽しむ時間なんてありませんでした。
「ちょっと、何よそれ…」
文香が呆然と『僕』を見つめる。
『まさか、そんな"条件"を用意されるとは…お見事です』
アスタルは意外だった、という顔でアモーネを見た。
『これだから兄上のなさる事は…』
アモーネは勝ち誇った様な顔で文香を見ながら、
『妹ちゃん、安心なさい。男に戻すと言っても、ほんの6時間でまた女の子に戻るからね』
補足するようにアスタルも口を添える。
『文香様との契約に変化はございません…これは、お兄様と私めの兄との間で成された契約…一時的な男への変身、と言ったところでございます。』
「というわけだよ、文香…じゃあ僕は、ちょいと【天使】でも探しに行くから」
そそくさとこの場を立ち去ろうとすると、文香に腕を掴まれた…
「ど、こ、に、行くって…?」
今までに見た事が無いくらいに怖可愛い妹の笑顔…
「あんな変態地味た真似をしておいて逃げるおつもりですか?お兄様…」
文香さん、こわいです…とてつもなくこわいです…カタ:(ˊ◦ω◦ˋ):カタ
『よく言うわよねぇ〜』
アモーネさん!?今はこの妹を刺激しないでぇー!
『アンタがやってた事と大差ないじゃない?お風呂に割り込んだり、ベッドに潜り込んだり…そんな事したら…』
文香の顔が真っ赤になり、続けて真っ青に変わる━━
『結局、アンタからお兄ちゃんにチューしちゃってたかも知れないのよ?』
『それにね━━』
真っ赤な唇の端をぺろっと舐めて、アモーネは続けて言った。
『アンタのその衝動はそこのアスタルと契約したから、なのよ』
「「ぇぇえええええッ!?」」
あのガチ百合が悪魔のせいですと!?
『あ、アンタのガチ百合は元々よ。そうじゃなくて、お兄ちゃんが女の子になってからのアンタの行動が、って事よ』
『さらに言うとね、アンタにあんな事したお兄ちゃんも、アタシと契約した影響がそうさせた、と言えるわね…』
そうかそうか、僕は悪くないんだな…
『でも、理性の強い人ならしないわよ、あんな事』
ですよねー(´>∀<`)ゝ
『アタシ達は【色欲】の悪魔だから、契約者はその影響を受けてそういう事をしたくなっちゃうのよ…』
そういう事だったのか…って、それよりも今は【天使】を探しに行かなくちゃ…
『どこ行くの!?待ちなさい!』
「はぁうんッ!?」
今度はアモーネに掴まれた…その…大事なトコロを…
『あら?中々いいモン持ってるんじゃない♡』
「やめんかいっ!」
どうにか手を外せた…全く━━
『ちょっとアンタ、どこ行くつもりだったのよ!』
「えっと…お花を摘みに…とか?」
━━ぐるぐる巻きにされて床に転がる僕…
「しくしくしくしく…」
『━━ま、とにかくお兄ちゃんのした事はアタシ達の契約のせいだから笑って許してあげてね♡』
「今回だけ許してあげる…」
そう言ってから、文香は僕に目を向けた。
「コンドヤッタラコロスカラ」
やめてぇー!カタカナみたいな発音で言うのやめてー!!
『とりあえず、あの【天使】達のこともあるし…』
アモーネが僕達を見てニヤッと笑う。
『御二方におかれましては、私共の御用意致します別邸にて生活して頂くこととなります』
突然訳分からないことを言い出すアスタルさん。
『まあ、【天使】にちょっかい出されないようにアタシ達の保護の下で暮らしてもらうわよ?』
『今まで通りの生活に近いわね、まあ、寮生活みたいなモノと思って頂戴』
「拒否権は━━無しってわけね」
諦めたようにため息をついた文香…
━━受け入れるのかよ!?悪魔と暮らすのかよ!?
こんな事になるなんて…おネエと執事とガチ百合と暮らす━━
「まともな暮らしになるわけ無いやーん!」
━━そして、女に戻るまで、僕は簀巻きのままでした…
いや〜、悪魔さん達もレギュラー登場させたくてこんな流れにしてしまいました…
そして、アモーネさんはスピンオフさせたいと今から企んでいます(☆。☆)キラーン!!




