奴隷契約
宿屋に向かう前に服を購入しよう。そう思い立ち服屋を探す。いや、探す必要もないのかもしれない。目の前に大きな看板があるのだから…。
【服屋クリスティーナ】
目立つ…。めっちゃ目立つ…。なんで看板の周りピンクにピカピカ光ってるのさ…。当たりを見回すが服屋らしき店はない。仕方なく、全力で警戒しながら店に入ると。
「あら、いらっしゃいませ。服屋クリスティーナの店長クリスティーナよ、よろしく」
挨拶と共に現れる黄色い化物。これ前に見たよ…。なんでこの街は化物が2人もいるんだ。
「服を何着か一式で欲しくて…」
「分かったわ。貴方のサイズに合うものを数点持ってくるわよ。予算はどれくらいかしら?」
「予算か。因みに、1セットいくら位だ?」
「貴方冒険者かしら?それなら少し根が張るけど絹の服がいいと思うわ。一式1万バルよ」
「それなら、それを5セット頼む。あとタオルがあれば同じく5枚頼む」
「わかったわ。一応試着してちょうだい」
そう言って店の奥に引っ込むクリスティーナ。
暫くして服を持ってくるクリスティーナ。
試着をして問題無いことを確認して支払いを済ませる。
「また来てちょうだいね」
店を出る時に一言声をかけてくるクリスティーナ。
以外といい人だったよクリスティーナ。見た目がすごかったけど。
ギルドで教えてもらった宿屋は普通だった。普通の人が受付をしていた…化物じゃないって素晴らしい。
金に余裕はあるので、朝晩の食事付きの一番高い部屋に泊ることにした。案内された部屋は3階にあるベッドが1つある8畳位の部屋だ。
「夕食と朝食は1階の食堂だ。提供している時間を過ぎると食べられないから注意してくれ。返金も受け付けていないからな」
「ああ、ありがとう」
そういうと、案内してくれた宿屋の大将が1階に戻っていった。
久しぶりのベッドだ。草のベッドはノーカンだ。
まだ夕食の時間まで少しばかり時間はあったので少しベッドで横になることにした。時間になったら起こしてねナイ。
《承知しました》
それじゃあベッドへダイブだ!おやすみ!
2時間位経った頃にナイに起こされた。脳内にアラーム鳴らされ続けた。煩かった。
《なかなか起きなかったので、少し強めにしてみました》
最初は手加減してくれたらしい。結構爆睡していたみたいだな。
「おう、来たかにーちゃん。今用意するから適当な席に座ってくれ」
1階の食堂へ行くと大将が迎えてくれた。
「食べ終わった食器はそのままでいいからな。こっちで片付ける」
一言頷くと食事へ目を向けた。パン、スープ、サラダ、そしてステーキのセットだった。この世界に来てから果実ばかり口にしていたから普通の食事は嬉しい。一応ナイ曰く栄養抜群な果実だったらしいけど、やはり栄養価だけでなく見た目や食感は食事の醍醐味だろう。
久しぶりの料理をゆっくり味わいながら食べる。明日から果実とさよならだ。また冒険の時に会おう名の知らぬ果実よ。
《あの果実は「コテの実」です》
コテの実というらしい…。コテの実また会おう。
食事を済ませて自室へと戻り、借りた桶と水を使って体を流す。さっぱりするとベッドに横になる。さっき少し寝たがそれでも眠い。大分疲れが溜まっていたようだ。
仕方ないか、異世界に来て魔物を倒して2週間近く経っているのだ。現代日本人には厳しい毎日だった。そんなことを考えていると意識が遠くなっていった。
異世界生活13日目の目覚めは宿屋のベッドの上だ。異世界に来てから初めてのベッドでの起床だ。今日の予定はフィーアを迎えに行くことだ。それ以外の予定はその後考えるから何も問題ない。
朝食はパンとスープと卵だった。美味しかった。朝食を食べると宿屋を後にしてクリスの待つ奴隷商店まで移動する。宿屋から目的の店までは徒歩10分位だった。以外と近所だ。
店に着くとそのまま店の中に入る。店に入るとそこは直ぐ応接間のようになっていた。ここで商談を行うのだろう。
「あらケイちゃんじゃない。いらっしゃい。約束の日までまだあるけど、もうEランクになったのかしら?」
俺が店に入ったのを確認したクリスが話しかけてきた。
「ああ、もう達成したぜ」
「後1日位かかると思ってたわ。一応カードを見せてもらってもいいかしら。とりあえず椅子に座ってちょうだい」
クリスがギルドカードの提示を求めてきたので椅子に座るとギルドカードを渡した。
「ありがと、ちょっと確認させてもらうわね」
そう言いながらクリスが受け取る。
「ちょっと待って。ケイちゃん。貴方実は元々冒険者だったの?」
「いや、この街に着いてから登録している。それは冒険者ギルドに確認してもらってもかまわない」
僅か8日でランクFからBまで上がれば流石に驚くか。普通は何年もかかるらしいし。
「一応聞かせてもらっていいかしら。いったい何したらいきなりFランクからBランクまで上がれるのかしら」
「ゴブリンを400体程とジェネラル、キングの討伐をしたらランクBまで上げてもらえたよ」
別に隠すようなことじゃないからな。これは伝えても問題ないだろう。
「この前の戦いを見ていたからゴブリン400体は驚かないわ。でもジェネラルとキングは別よ。どっちもゴブリンを操るから普通はパーティーでの討伐が推奨されるのよ。いったいどうやって1人でジェネラルとキングを倒したのかしら」
ジェネラルとキングって配下連れてるのかよ!確かにどっちもポップアップした所を倒したからな…。つまり、ジェネラルもキングも本領発揮せずに俺に倒されたってことか。
「どっちも魔素から生まれて直ぐに倒したからな。配下を生み出す暇も無かったんじゃないか」
「成程、配下のゴブリンがいなければある程度難易度は落ちるわね。それでも1人で倒すなんて凄いわよ」
クリスに褒められた。あまり嬉しくない。むしろダメージが…。
「それじゃあ約束通りフィーアとの奴隷契約をしてあげるわ。今フィーアを連れてくるから待っていてちょうだい」
そう言うとクリスは店の奥に消えていく。
半刻程待った頃、クリスがやってきた。
「おまたせ。フィーア連れてきたわよ」
クリスの言葉通り、クリスの後ろからフィーアが現れた。膝下まで届くワンピースを着ていた。
「ケイ様。お待ちしておりました。これからよろしくお願いします」
そう言うと頭を下げる。
「早速契約を始めるわよ。二人共こっちに来て向かい合って頂戴」
クリスに言われるがままにフィーアと向かい合う。目の前にフィーアがいる。真っ白な髪と真っ白な肌、瞳は綺麗なライトブルーだ。身長は150cmも無いだろう。胸は…。
「それじゃあ、始めるわね」
クリスがそう言うと俺とフィーアを中心に床に魔法陣が現れる。10秒程すると魔法陣が消えた。
「終わったわよ」
魔法陣が消えるとクリスがそう告げた。
「コレでフィーアはケイちゃんの奴隷よ。普通の奴隷と同じように主の命令には従わないといけないから注意してちょうだい。主の名に背こうとすると、それを止めるまで痛みが発生するわ。あり得ないとは思うけど、主に害をなそうとしたり命を奪おうとしたら、逆に奴隷の命が失われるから気をつけて頂戴」
成程、奴隷は主に逆らえないし、主を害することもできないってことか。
「わかりました。ケイ様…。いいえ、ご主人様、これからよろしくお願いします」
ご主人様か…。いい響きだ。こんなに可愛い子に言われるなら尚更だ。それでも考えていたことが有り、それを伝えないといけない。
「フィーアよろしく。1つだけ伝えないといけないんだけど」
俺がそう告げるとフィーアの頭の上に?が浮かんだ。
「フィーアが討伐を求めていたブラッドウルフを倒した後、フィーアを奴隷から開放しようと思っているんだ」
ブラッドウルフを倒した後、フィーアを奴隷から開放するつもりだ。元々、犯罪奴隷でもなく、不運の重なりで奴隷となってしまったのだ。奴隷から開放してあげてもいいじゃないか。
「あら、ケイちゃん本当にいいの?せっかくの美少女奴隷よ?」
「ああ、フィーアの目的を達したら奴隷から開放するよ。その後はフィーアの好きにしてもらっていいさ」
そう言われたフィーアは驚きの表情だ。
「本当に、本当によろしいのですか?せっかく手に入れた奴隷を手放すなんて信じられません。」
「俺は奴隷が欲しかったわけじゃないからな。フィーアが望まないなら奴隷のままでいいけど…」
その場合、フィーアを大切にするつもりだ。可愛いし。あと可愛いし。
「そうですか。この件についてはその時まで考えさせてください」
「分かった。その時までゆっくり考えてくれ」
「その時はウチに来てちょうだい。契約解除をさせてもらうわ」
その時はクリスに頼むとしよう。
「それじゃあ、もう行こうか。クリス、色々ありがと」
「また奴隷が必要になったら来てちょうだい。ワタシは犯罪奴隷しか扱ってないけど、同じ奴隷商にそれ以外の奴隷の子達を取り扱っている人もいるから。冒険者をやるなら戦闘用の奴隷も必要になることもあると思うわ」
「そうだな、その時もクリスに相談させてもらうよ」
戦闘用の奴隷か。俺は完全に後衛タイプだから前衛が欲しいところだ。
「それじゃあ、また来るのを楽しみに待っているわ。フィーア、貴方の目標が達成されるのを願っているわ」
「クリスさん、ありがとうございます」
フィーアが挨拶するのを見てから店を後にする。
「そう言えばフィーア荷物はあるのか?」
「いいえ、奴隷ですので」
そうなると服も今来ている服だけか。
「それじゃあまずはフィーアの身の回りの物を揃えようか」
「よろしいのですか?」
「勿論だよ」
俺はそう言うと【服屋クリスティーナ】へと向けて歩きだす。服屋あそこしか知らないからね!
「ありがとうございます。ご主人様」
フィーアは俺の後ろを着いてきた。一歩後ろをってやつだ。
「あの、ご主人様。大変恐縮なのですが、わたしから1つお願いしてもいいでしょうか」
服屋の近くまで歩いた所でフィーアが言った。
「俺に出来ることなら大丈夫だよ」
どんな願いかわからないけど可愛い子の願いなら叶えたい。
「それでしたら、ブラッドウルフとの戦いでわたしも戦わせてください」
「ブラッドウルフと戦いたいのか?」
フィーアから出た願いに驚愕した。
「はい、足を引っ張るのは申し訳ないと思いますが、わたしにも戦わせてください。お願いします」
フィーアは頭を下げながら言う。
「…フィーア、キミは戦えるのか?」
「村にいる時は自衛用に槍を少し練習していました。勿論練習だけなので、戦いの役に立つかはわかりませんが…」
一応槍を使ったことはあるのか。
「それならまずは実践で戦ってもらおうか。それを見てから決めるよ」
「わかりました」
「それじゃあ武器と防具も買いに行かないとね。先ずは服からだけど」
「はい!」
少しだけフィーアの顔が明るくなった気がする。そんなことを考えながら服屋へ入る
「あら、いらっしゃい」
そう言って現れた黄色の化物、クリスティーナ。
フィーアが仲間になった。
ステータスはシナリオ内で公開する時が来るまで楽しみにしてください。