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クラリスの何でも屋

「はーい、ちょっとまってねーん」


 ハインツから紹介された店に入ると太い声が帰ってきた。これで三度目ともなればいい加減慣れたよ。


 5分ほど待ってから店主であろう人物が店の奥からやってきた。


「あら、いらっしゃい。『クラリスの何でも屋』にようこそ。あたいが店主のクラリスよ」


 そう言いながら現れたのは淡い紫のドレスをまとったスキンヘッドのマッチョだった。

 某怪盗アニメに出てきた美少女と同じ名前のオカマのマッチョなんて誰得だよ。お前の心は誰も盗まないよ。しかし何故だろう、逆に安心する。


「ギルドマスターのハインツからこの店を紹介されたんだ。馬車が欲しくてね」


 馬車なんてすぐに用意できるようなものではないだろう。しかし俺は知っている。マッチョなオカマ店員はかなり優秀なことを。

 それに、ギルドマスターであるハインツからの推薦ならかなり信頼できるだろう。


「馬車ねえ・・・、無いことは無いわよ」


 予想通り馬車をすぐに手配できるようだ。だが少し含みのある言い方だな。


「一つだけ問題があってね。あたいが直ぐに用意できる馬がちょっと問題があってね」

「問題?気性が荒いのか?」


 あまりにも言うことを聞かないのは困るけどなんとかする術は一応なくもないかな。


「性格は素直ないい子よ。ただ、自分が認めた人が同行していないと全く言うことを聞かないのよね。それを無視して無理やり言うことを聞かせようとするとちょっと蹴っ飛ばしたりね」

「なるほど、つまり気に入られなければ最悪怪我をするわけか」


 気に入られなければ仕方ないかな。その時は別の手段を考えよう。


「最悪のパターンだと怪我じゃ済まないのよね。あの子過去二人手にかけてるわよ」

「なんでそんな危険な馬が処分されてないのよ!」


 あまりに危険な馬だったようでユイが声を上げた。

 確かに、二人も殺めている馬なら処分されてもおかしくない。


「一応理由があってね、その馬の親がこの国の王が気に入っている馬なのよ。その子供であるあの子を処分なんてできるわけ無いわ」

「王お気に入りの馬の子供か、それなら確かに処分はできない。それでも厄介な馬であることには変わりないから商人が引き取っているってわけか」


 王家が大切にしていた馬の子供を一商人に卸す位には手がつけられないのだろう。そうなるとかなりじゃじゃ馬な馬のようだな。馬だけに。

 ・・・今の無しで。


「因みに、他の馬を手配するなら一週間位かかるわよ」


 じゃじゃ馬が無理だった場合は一週間かかるのか。早く王都に行きたいところだが、仕方ないか。今後冒険者として各地を旅するなら馬車は持っておきたいところだ。パーティーメンバーも増えたし、馬車を購入できる余裕があるならなおさらだ。


「その馬を一度確認することはできる?ダメなら別の馬で大丈夫だから」

「いいわよ、多分無理だとは思うけど。あの馬がいう事を聞いた人間は殆ど居ないみたいだからね。あたいだってただの食事をくれて毛をとかす人って認識で危害を加えていないだけだしね」



 じゃじゃ馬と合わせてもらえる事になり、俺たちはクラリスに案内されて店の裏手にある馬小屋へとやってきた。

 馬小屋の中には二頭の馬が居た。一方は全身が真っ黒なので青毛だろう、もう一方は純白の白毛だ。


「例の馬は二頭なのか?てっきり一頭かと思っていたけど」


 先程の会話では一頭だけな感じだったけど、実際は二頭共だったりするのかな?それならそれで構わないけど。


「さっき言ってた子は白いほうよ。黒い方は白い方と仲良くなって引き離そうとすると白いほうが襲ってくるからあの二頭はセットってわけ」

「なるほど、それじゃあ白い方に気に入られれば黒い方もセットでついてくるわけか」


 二頭セットになるのはいいが、問題はあの白馬に気に入られるかどうかだが、どうしたら気に入られるのか・・・。


「それにしても二頭ともすごいきれいな毛並みね。あんなの私の実家にもいなかったわよ。流石由緒ある馬は違うわね」

「そうですねー。私も里に馬がいましたけどあそこまできれいな子いなかったですよー」


 貴族であるユイの実家やアイラの故郷であるエルフの里の中にも流石にあのレベルの馬は居ないらしい。


「わたしが見たことのある馬も一緒ですね」

「…馬、殆どみたことない」


 故郷が街から距離のある村に住んでいたフィーアや生まれてからずっと奴隷だったクレハも同様のようだ。

 そういう俺も元いた世界で実物の馬なんて殆ど見たこと無い。それでもあの二頭からあふれる気品はわかる。それくらい凄いと思える馬だ。


「それで、どうしたらあの白馬に気に入られたってことになるんだ?」

「そうね、一番手っ取り早いのは直接触れることだけど危険だからオススメはしないわよ。触っただけで蹴っ飛ばされるんですから」


 直接触れられればいいのか。しかし、気に入られなければ蹴られるおまけ付きか。危険だから流石に他のメンバーに触らせるわけにも行かないし、身体強化でも掛けて俺だけチャレンジしてみようかな。無理なら一週間待てばいいだけだ。


「すごいさらさらー」

「本当ですね。しっかり手入れされてるのがわかります」

「こっちの子もすごいですよー」

「本当に素晴らしい馬ね」


 俺の目と耳がおかしいのだろうか、うちのメンバーが二頭の馬に触れている気がする。

 クレハとフィーアが白い馬、アイラとユイは黒い馬に触れて楽しんでいた。


「えっと、あれは気に入られてるってことでいいのか?」

「そ、そうなるわね。今まで誰も寄せ付けなかったあの子達が一気に4人に触られてなにもないなんて・・・」

「それは良かった。俺もさわれるか確認しておこう」


 皆が触って楽しんでいる中俺も白馬に触れる。

 おお、これは凄い。毛並みがいいためか凄い感触だ。正直ずっと触っていられる。


 俺が触っていると白馬がじっと見つめてきたがやがてしっぽを振り始めた。犬はしっぽを振ると機嫌がいいって言うけど馬もなのかな?実は猫みたいに嫌だからしっぽを振っているわけじゃないよな・・・。

 そう思い触るのをやめると少し残念そうな表情をしている気がしたため、再度触ると満足したような表情をした。馬の表情なんてよくわからないけどそんな気がした。


「まさかあなたまで触れるなんてね。流石は一ヶ月でAランク手前まで到達した冒険者ってことね」

「どうして俺の情報を、なんてのは野暮な質問か」


 商人であれば情報は命である。Bランクの冒険者くらいの情報はある程度もっているのだろう。


「そうね、因みにあと一ヶ月以内にAランクに達すれば歴代最高速よ」


 歴代最高速には興味ないが、Aランクになれるならなっておきたい。Aランクになればある程度融通が聞くようになるからフレデリックのような奴が現れても多少は優位にたてるはずだ。


「そういえば、あなた達のパーティーが5人になったのよね。パーティー名を教えてもらえるかしら」

「ああ、ついさっきギルドに登録してきたんだ。俺たちはジェネシスだ」


 先程ギルドで依頼を確認しながらパーティー名とアイラ、クレハのパーティー登録をおこなってある。


「ジェネシスね、何かあったら言ってちょうだいね。少しくらいは贔屓してあげるわ」

「そうしてもらえるなら助かるよ」


 クラリスとパーティー名について話しているとふと気になった事がある。


「そういえば、あの二頭の名前は何ていうんだ?名前がわからないと不便で仕方ない」

「あの子達名前無いのよ。あなたが飼い主になるわけだし、なにか良い名前つけてもらえる?」


 名前ね・・・。パーティー名に続いてまた名付けか。苦手なんだよね名前考えるの


「こっちの白い方がシロ、黒いほうがクロでいい?」


 悩んでいたところにクレハが手を差し伸べてくれた。

 シロとクロすごくわかりやすくていい名前だ。これで決まり!

投稿の間があいてすいません!


これから再開します!

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