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武具調達-アイラ・クレハ編-

 異世界生活30日目、朝食を済ませた俺達はレグルスが街を訪れる時間までにアイラとクレハの装備を手に入れるためにアトシュの街の武具屋にやってきていた。


「マスター!ありましたよ魔力弓ですー」


 店に入って早々にアイラが欲しがっていた魔力弓を発見したようだ。


「アイラがよければ弓はそれでいいかな?一応矢も購入しておこうか」


 魔力弓は魔力を込めることで魔力を矢として飛ばすことができるが、魔力を込めなければ普通の弓と同じく矢を射ることができる。


「そうですねー。里で作っていた弓には劣りますけど結構良い性能だと思いますよー」


 里、つまりエルフの里のことだろうか。

 エルフは弓と魔法が得意な種族らしいので作られる弓は相応なものなのだろう。


「それならそれにしようか」


 店に入って1分でアイラの弓が決まったようだ。


「クレハは決まった?」


 剣術スキルを持つクレハは剣を購入する予定だ。


「・・・どれがいいかわかんない」


 クレハは両親が奴隷だったために奴隷となっていたのだ。生まれつきスキルを持っていただけであり、実際に剣を振ったことはないのだ。

 どれが自分に合った武器かなのか判断できないのだろう。


「うーん。俺も剣はわからないからな。おとなしく店主に聞くとしよう」


 フィーアもユイも剣は使わないからわからないだろう。ここはプロに従っておくのが一番であろう。



「嬢ちゃんに合う剣か・・・。ちっこいから長物は扱いづらいだろうし、こっちのダガーはどうだい?」


 そう言って店員が見せてきたのは刃渡り20センチほどの短剣だった。


「これ短剣スキル?」


 どうやら剣術スキルとは別に短剣スキルが存在するらしい。クレハが持っているスキルとは会わないので候補外になるだろう。


「申し訳ないが、剣術スキル用の武器なんだ。それでいいのはあるか?」


 先程は剣がほしいとしか行っていなかったので、条件を追加する。


「剣術スキル用の武器か。ちょっと値は張るけどそうなるとこっちはどうだい?」


 店員が新たに見せた剣は刃渡り50センチ程のショートソードだ。


「こいつはちょっと特殊な剣でな。魔力を込めると長さを変えることができるんだ。」


 店員がそう言いながら魔力を込めると剣の長さが倍になった。 


「元に戻すのにも魔力が必要なのが欠点なんだけどね」


 再度店員が魔力を込めると元のサイズになった。


「成程、魔剣ね。伸縮だけなら大した性能じゃないと思うけど」


 魔力を込めることで様々な効果を発する剣を魔剣というらしい。

 因みに、槍であれば魔槍、弓であれば魔弓と呼ぶ。


「魔剣か。ユイは見たことあるのか?」

「お父様が一本持っていたわ。剣に炎を纏わせる剣だったけど、使うことは無かったから宝の持ち腐れだったけど」


 貴族であるユイの父親が所有していた魔剣を見たことがあるようだ。

 炎を纏わせるだけで何か意味はあるのか?


《火属性が弱点の相手に火属性ダメージを与えることができます》


 成程、火魔術スキルが無い人でも弱点を突くことができるのか。なかかな優秀な剣のようだ。


《その代り、発動中はすごく熱いです。剣が燃えるので。持ち手の部分も高温になるため素手で持つと大火傷を負います。使用するためには耐火スキルが必須と考えられます》


 前言撤回、なんとういう欠損武器だろうか。耐火スキルがなければただの自滅装備になってしまう。

 会ったこともないユイの父よ、その剣を使わないことを祈っているよ。


「クレハ、この剣はどうだい?」


 ユイの父の安否は一先ず置いておくとして、実際に剣を使うクレハに持ってもらった。


「ちょっと重いけどだいじょぶ」


 小柄なクレハには少し重かったみたいだが体を鍛えれば問題なく使いこなせるだろう。


「リーチは短くなるかもしれないけど、使うときに短くすれば嬢ちゃんでも使いやすくなると思うぞ。その剣は短くなっても剣術スキルに対応しているからな」


 成程、あくまでも魔”剣”であり魔”短剣”では無いということなのだろう。

 残念なことに鞘は通常サイズのものしか無いようなので長さを変えたらもとに戻す必要があるようだ。


「これで二人の武器は揃ったけど、ユイとアイラにも一応短剣くらいは装備してもらったほうがいいかな」


 二人共遠距離攻撃を得意としているため、懐に入られた時に対応できる武器があったほうがいいだろう。


「それなら私はさっきのダガーでいいですよー。里にいたときは少しだけ使っていたのでー」


 アイラは先程クレハに合わなかったダガーでいいようだ。先程から即決でこちらとしてはすごく助かる。


「私は近距離用じゃないけどこれなんてどうかしら」


 そう言いながらユイが指したのは革で作られた鞭だった。


「・・・俺その趣味無いよ?」

「ち、違うわよ!武器よ武器!」


 武器か。夜に使われることが無いのであれば安心だ。


「でもなんで鞭?鞭は中距離武器なんだし近距離武器の短剣でもいいんじゃないか?」

「お母様が昔鞭を使っていたのを見たことあるのよ。それで少しだけ教わっていたから・・・」


 ユイのお母さん。鞭を使った相手は魔物ですか?夜の魔物ですか?子供の前で何しているんでしょうか。しかも教えているなんて・・・。


「えっと、一応言っておくけど森の魔物相手よ?」


 俺の視線で察したのだろう、ユイから訂正が入った。


「完全に近寄られると危ないけど無いよりはマシかな」


 戦いのスタイルを強制することはできない。本人が使いたい武器があるのであれば止める理由はない。


「後はアイラとクレハの防具かな」


 アイラは魔法と弓で戦うスタイルとなる為、後衛用の防具で問題ないだろう。

 問題はクレハだ。クレハの武器は剣であるあため必然的に前衛となるが彼女は小さい為に前衛用の鎧等は装備できない可能性が高い。


「そうですねー。私はこれでお願いします!」


 先程から即決のアイラが指したのはケープだ。


「エルフの嬢ちゃんは見る目があるね。こいつは風の加護が付いたケープでな。弓矢から身を守ってくれる効果があるんだ」


 流石ワンフォード王国で2番目に大きな街だ。エコーリアにあった武具屋とは品揃えが違う。

 それにしてもアイラは鑑定スキル持ってないはずなのにどうやってあの防具の性能がわかったのか。


「そんな効果があったんですかー。可愛かったから言ってみただけなんですけどねー」


 ・・・どうやらただの感だったようだ。

 アイラの防具は一応決まった。次は問題のクレハだ。


「狐の嬢ちゃんは何がいいのやら。一応鎖帷子もあるけど重いかもしれないなあ」


 服の下に装備できる鎖帷子は金属の塊であることは変わらず、普通の鎧よりは軽いものの重量はそれなりにある。

 クレハに合わせて長さを調整しても動きを阻害するデメリットのほうが大きいだろう。


「そうなると動きやすい軽装備がいいのかな?」

「ん、当たらなければどうということはない」


 それどこの赤い人ですかね。どうしてそれを知っているんですかクレハさん。


「軽装になるとエルフの嬢ちゃんと同じケープがおすすめだな。前衛といえど弓の驚異には晒されるわけだしな」


 正直弓なら俺の『ウインドアーマー』で防げるが使われている素材がレアドロップ品の為に下手な革の鎧よりも防御力があるらしい。鎧よりも覆う範囲が少ないのが欠点であろうか。



「まいどあり!」


 会計を済ませ店から出る。想定よりも置いてある品が良かったため、思った以上に消費してしまった。早くフレデリックの件の報酬がほしいくらいには消費した。


3章開始します・

投稿が遅くなってしまい大変申し訳ありませんでした。

ちょっと体調崩したり忙しかったりで・・・

次は明日上げる予定です。

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