戦いの後に
女神が止めた時間が再度動き出したところで、ハインツと俺は元いた部屋へと戻っった。
魂を連れて行かれたクロードの体を見ると、一応死んではいない様だ。
「さて、フォード様、今回の件はいかが致しましょうか」
部屋に戻るとハインツがそう言い放った。
室内に残っていたフォードは渋い顔をしており、フレデリックは放心状態となっている。
「本来であれば、この街から冒険者ギルドの完全撤退となりますが」
「わかった。フレデリックの身柄をそちらに預けよう」
冒険者ギルドが完全撤退するより、息子を犯罪者として身柄を引き渡したほうが良いと判断したようだ。
「それと、例の奴隷はそこの冒険者のものとして構わない」
アイラとクレハの所有権もこちらに移すと約束をしてくれた。
後で奴隷商を呼び出して主人の移行を行うとのこと。
「いやだいやだいやだ。なんでいつも僕の思ったように行かないんだ!」
自身が犯罪者として扱われ、アイラとクレハの所有権が俺に譲渡されると聞いたフレデリックが放心状態からもとに戻り、駄々っ子モードが発動したようだ。
「前だってそうだ。ライカン男爵家の娘が光魔術スキルを持っていたから奴隷にしてやろうと思ったら先に奴隷商に売っていたこともあったし」
光魔術を持った貴族を奴隷にした?それってユイのことか?
「馬鹿な家だ。僕に言えばもうちょっと高く買ってやったのにな」
どうやらユイの実家に彼女を奴隷として売ることを提案したのはフレデリックだったようだ。
「お喋りはそこまでにしてもらえる?私も暇じゃないの」
いつの間にだろうか。フレデリックの背後に隠れるように少女が現れていた。
「おお、クロネコではないか。僕を助けに来てくれたのか?」
「上からの指示」
「成程、上は僕を見捨てないということか。それは嬉しいね」
クロネコと呼ばれた少女は名前の通りに黒い髪に猫耳をつけており、黒いワンピースを着ていた。
獣人の目印となる尻尾は生えていないため、獣人ではないと思われる。猫耳カチューシャかなにかだろう。
「さて諸君。僕はこれで失礼するよ。おっと、クロードはどうするんだい?」
「破棄だって」
「そうか。能力は勿体無いが…。まあ。ああなっては仕方ないか」
フレデリックとクロネコの関係は分からないが、二人共この場から逃げることを考えているようだ。
「そう簡単に逃がすとでも?」
ハインツも二人を逃すまいと魔法を発動するが、二人に魔法は当たらず、背後の壁が吹き飛んだ。
「無属性魔法ね。悪くないけどいらないわ」
どうやらクロネコのスキルによって魔法の発動位置が変わったようだ。
どのようなスキルを持っているのか、先程のクロード戦での失敗を基に鑑定スキルを発動しておくとしよう。
【 鑑定失敗 】
クロネコとフレデリックに表示された鑑定結果が失敗と表示された。今までこんな事は無かった為、何かのスキルか道具なのだろうか。
「鑑定は無駄よ。それじゃ、また会いましょうね」
俺の鑑定を察知したのか、クロネコがそれだけ言うと二人の姿が消えた。
転移魔法を使ったのだろう。こうなっては簡単に見つかるとは思えない。
レストホルン家で起きた戦闘は一応終了したが、スッキリしない結果となってしまった。
女神もそうだが、できればまた会いたくはない連中だった。
「逃してしまいましたか。それにしても彼女はいったい…。いや、もしかして…」
クロネコを逃したことについて何か思うところがあるのか、ハインツが呟いた。
「フォード様、ご子息のことについてですが…」
「分かっておる。あの馬鹿息子に対する調査は冒険者ギルドで進めて貰って構わぬ。それと、陛下へ報告せねばなるまい」
アトシュの街を治める領主の息子が怪しい組織に組みしているのを国のトップに伝えないわけには行かないのだろう。
フォードには他にも子供が居るようなので、後継ぎは問題ないようだ。
「後継者の第一候補が怪しい連中とつるんでいるなんてバレたらレストホルン家の評価は落ちるであろうが、仕方あるまい」
フォード・レストホルンという人物は、言動は偉そうであるが、かなり思慮深い人物のようである。
「ハインツ殿、此度の件を陛下へ報告してほしいのだが、それを冒険者ギルドに依頼することは可能か?」
「可能ですが、その依頼を受けられるとしたらAランク以上もしくは推薦を貰ったBランク以上の冒険者となりますね」
ハインツがこちらをチラチラ見ながらフォードへ告げる。
この感じ、俺に押し付ける気だろう。
「そうか。そこの・・・、ケイといったか。お前に陛下へ今回の件を伝える依頼を頼もうと思うのだが問題あるか?」
ハインツの意図を汲み取ったフォードが俺に話を振る。
「問題ないです。今回の件は一応俺も関わりがあるので、説明もしやすいですからね」
今回の件については俺が一番関わっているからな。仕方無い。
「では、戻り次第依頼書を作成しますね」
次の目的地は王都フォーカスか。フィーアとユイと一緒に王都観光でもしようかね。
「それと、今回のケイ君に対する依頼の契約違反と私達に対する敵対行為についてですが…」
「わかっている。フレデリックの依頼は私から報酬を支払おう。敵対行動に関する点だが、ギルドへの寄付をさせてもらうということでどうだ?」
「それで問題ありません。寄付については後ほどゆっくりお聞かせ願います」
ハインツが笑顔でフォードに話を振るが、目が笑っていない。
フレデリックの依頼の報酬を受け取るだけでかなり遠回りしてしまったようだ。
簡単にだが、話がまとまった所で俺達を部屋へ案内してくれたメイドが入室してきた。
フォードの横まで行き、何かを伝えたようだ。
「奴隷商が着いたようだ。今日のところはそれが終わったら話は終わりでいいか?」
フレデリックが消えてから直ぐに奴隷商を呼び付けたのだろう。かなり早い到着だ。
「そうですね。今日は僕も疲れましたし、ケイ君に奴隷の譲渡が行われたら御暇しますよ」
ハインツがそう告げて、俺達は部屋を後にした。
部屋を出る時に見えたフォードの顔は疲労だけでなく、悲壮感溢れる表情をしていた。
「これで、この奴隷たちはケイ様のものとなりました」
フレデリックが奴隷を入れていた部屋で、アイラとクレハの主人を俺へ変えたことを奴隷商が宣言した。
二人以外の奴隷が見当たらなかったので、フレデリックが属していた組織へ定期的に連れて行っていたのだろう。
「アイラ、クレハこれからよろしく」
ようやく会うことができた二人に声を掛ける。
二人の服装は分かれたときと同じく、俺が渡した服のままだった。
「はーい。マスターなら来てくれると思ってましたよー」
「…お腹空いた」
どうやら二人は俺が主人となるのを待っていたようだ。
クレハもそうだよね?
「?」
俺の視線に気がついたのか、クレハが首を傾げた。
「獣人にエルフですか。獣人は奴隷として扱われることが多いですが、エルフは問題になるかもしれないですね」
自身もエルフであるハインツによると、エルフは仲間意識が強く。特に仲間が奴隷となることに強く反発しているという。
それとは逆に獣人は奴隷としての身分を受け入れる者が多いらしい。主人によるが、衣食住がしっかりしているのが理由とのこと。
獣人はフォーリン共和国以外では、獣人の地位が確保されておらずまともな職と言えるのは冒険者位になってしまうようだ。
「僕は大丈夫ですが、他のエルフには彼女が奴隷だとばれないように気をつけてくださいね」
「わかりました。忠告感謝します」
ハインツからの忠告を胸に刻むと、アイラとクレハを連れてレストホルン邸を後にした。
「僕はこれからギルドに戻ってワンフォード王への報告書と依頼書を作成します。明日までには作っておく予定ですが、今回の依頼の報酬等で時間がかかってしまうと思うので、午後にでもギルドに顔をだしてください」
「わかりました。それでは、龍王の件を片付けてからギルドにいきますね」
イグニスの件を忘れていたのかハインツの顔が少し引きつるが、お願いします。と返事を返してきた。
「二人共、今日のところは俺が取っている宿に向かうから付いて来て」
ハインツと分かれた俺は、明日の午前中までに二人の服を何とかせねば。と、思いながら宿に向けて歩き出した。
本日予定があるので、書けたら投降します。
遅くても明日中には投降する予定です。
友人の結婚式とやらです。
リア充爆発してほしいですね。




